IT業界における人手不足は、多くの企業にとって喫緊の課題となっています。経済産業省の調査でも将来的には、人手不足が深刻化するとされています。このような状況下で、企業はどのようにして事業の継続性を確保し、成長を実現すれば良いのでしょうか。
この記事では、IT業界の人手不足が引き起こす具体的な課題を明らかにし、その解決策として注目されている「外注化（アウトソーシング）」に焦点を当てて解説します。業務効率化とコスト削減を両立させるための戦略的なアプローチについても紹介します。さらに、外注化がもたらす実際の効果や導入時の留意点についても触れ、現場で活用できる具体的な視点を解説するので、ぜひ参考にしてください。
最新データから見るIT人材不足の現状
経済産業省が行った「IT人材育成の状況等について」によれば、日本のIT人材の平均年齢は2030年までに上昇し、将来的には40～80万人の規模で人材が不足すると予想されています。
IPA（独立行政法人情報処理推進機構）が実施したDX人材についてのアンケートでも、「大幅に不足している」と回答する企業の割合が62.1%と、人材不足に悩んでいる企業が多くあると判断できます。
出典：IT人材育成の状況等について｜経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課
出典：DX 動向 2024 – 深刻化する DX を推進する人材不足と課題｜IPA（独立行政法人情報処理推進機構）
IT業界で人手不足が深刻化する背景
近年のIT業界は、技術革新のスピードが加速しており、それに伴い新たなスキルや専門知識が絶えず求められるようになりました。例えば、AI、クラウド、セキュリティといった分野は、企業のデジタル化やDX推進に不可欠な要素となり、これらの技術に精通した人材の需要が飛躍的に高まっています。そのため、業種を問わず、さまざまな企業がスキルを持った人材を確保しようとしています。
ここではIT業界で人手不足が深刻化する背景を詳しく見ていきましょう。
AI・クラウド・セキュリティ分野の成長
近年のIT業界はAやクラウド、セキュリティ分野が急速な成長を遂げています。これにより、これらの分野に精通した高度な専門スキルを持つ人材が、これまで以上に強く求められるようになりました。
しかし、こうした最先端の技術を理解し、実践できる人材は限られており、需要と供給のバランスが崩れている傾向にあります。企業は、技術革新のスピードに追いつくために、こうした専門家を確保しようと激しい競争を繰り広げています。自社だけでは専門的な人材を十分に確保することが難しく、これが業界全体の人手不足をさらに深刻化させている要因の一つと言えるでしょう。
デジタル化・DX需要の拡大
さまざまな産業でデジタル化とDXへの取り組みが加速しています。企業は業務効率化や新しいビジネスモデルの創出を目指し、ITシステムの導入や刷新を積極的に進めています。
DX需要が急増することで、IT業界全体の人材供給が追い付かなくなっている可能性があるでしょう。多くの企業がDXを推進しようとする一方で、それを実現するためのIT人材が不足しているため、プロジェクトの開始が遅れたり、計画通りの成果が出せないといった課題に直面しています。特に、中小企業にとっては、自社でDXを推進するためのIT部門立ち上げや専門家を雇い入れることが経済的な負担になりかねません。
人手不足がIT業界にもたらす課題
IT業界における深刻な人手不足は、単に人員が足りないという問題にとどまりません。プロジェクトの遅延、品質の低下、従業員の過重労働とそれに伴う離職率の上昇など、多岐にわたる課題を引き起こしています。これらの問題は、企業の競争力を低下させるだけでなく、業界全体の持続可能性をも脅かす可能性があります。
特に、高度な技術や専門性が求められる分野では、影響はより顕著に現れやすいでしょう。
プロジェクト遅延と品質低下リスク
IT業界における人手不足は、プロジェクトの進行に直接的な影響を及ぼします。必要なスキルや人員を確保できない場合、開発スケジュールに遅れが生じ、納期を守ることが困難になることがあります。
また、限られた人数で無理にプロジェクトを進めると、個々の作業者に過剰な負担がかかり、見落としやミスが発生しやすくなるでしょう。これにより、開発されるシステムの品質が低下するリスクが高まります。品質の問題は、その後の運用段階で重大なトラブルを引き起こす可能性があり、顧客からの信頼を損なうことにつながりかねません。
残業増加による従業員負担と離職連鎖
人手不足が常態化すると、既存の従業員一人当たりの業務量が増加します。これにより、長時間労働や休日出勤が常態化し、従業員の肉体的・精神的な負担が著しく増加します。疲労の蓄積は、生産性の低下だけでなく、従業員のモチベーションを低下させ、職場への不満を高める原因です。
残業による従業員の負担が増加したことで優秀な人材の離職につながり、さらなる人手不足を招くという悪循環に陥る危険性があります。特に、スキルアップを目指す若い世代は、労働環境の悪さを理由に、より良い条件を求めて転職する傾向にあるでしょう。
中小IT企業の競争力低下と市場格差
厚生労働省の発表によれば、大企業の給与は約36万円、中企業は約32万円、小企業は約29万円と差があることが分かります。
このように、大企業は、比較的高い給与や充実した福利厚生を提供することで、優秀な人材を確保しやすいでしょう。一方、資金力やブランド力で劣る中小IT企業は、人材獲得競争において不利な立場に置かれることが少なくありません。結果として、必要な人材を確保できず、新しい技術やサービス開発への投資が滞り、市場での競争力が低下する可能性があります。
企業が取るべき解決策とアプローチ
IT業界が抱える人手不足は、単なる一時的な問題ではなく、事業の存続や成長に直結する深刻な課題です。このような状況を打開し、持続的な成長を実現するためには、企業が積極的に解決策を模索し、実行していく必要があります。
人材の確保や育成、業務プロセスの見直しなど、多角的なアプローチを通じて課題を乗り越えていくことが求められるでしょう。
ここではIT業界の企業が取るべき人手不足の解決策を解説します。
DX推進による業務効率化と自動化
人手不足の根本的な解決策のひとつとして、DXの推進が挙げられます。例えば、定型的な業務や反復作業を自動化することで、従業員がより創造的で付加価値の高い業務に集中できる環境を整備しましょう。具体的にはRPA（Robotic Process Automation）を導入して事務作業を自動化したり、AIを活用したデータ分析ツールで意思決定を迅速化したりすることが考えられます。
これにより、限られた人員でより多くの業務を効率的にこなせるようになり、生産性向上に貢献します。
外国人エンジニア採用と多様性の活用
国内の人材市場が縮小する中で、グローバルな視点を持つことも重要になってきています。外国人エンジニアの採用は、IT人材不足を補う有効な手段のひとつです。海外には、高いスキルと豊富な経験を持つ優秀なIT人材が多数存在します。外国人エンジニアを積極的に採用することで、企業は新たな技術や知見を取り入れることができるでしょう。
また、多様なバックグラウンドを持つ人材が集まることは、社内のイノベーションを促進し、新しいアイデアや視点をもたらす可能性を秘めています。
リスキリング・社内教育の強化
人材不足を外部に頼るだけでなく、社内の人材を育成することも重要な解決策です。既存の従業員に対し、新しい技術やスキルを習得させるための教育プログラム（リスキリング）を積極的に提供します。
例えば、プログラミング言語の研修、クラウド技術に関する資格取得支援、AIやデータサイエンスの基礎講座などを設けることで、従業員のスキルアップを促し、企業全体の技術力を底上げ可能です。その結果、専門的な業務を内製化できる可能性が広がり、外部への依存度を減らせるでしょう。
アウトソーシング・BPOの活用による柔軟な人材補完
社内のリソースだけでは対応しきれない業務については、アウトソーシングやBPO（ビジネス・プロセス・アウトソーシング）を積極的に活用することが有効です。アウトソーシングは、ITシステムの開発や運用など特定の業務を外部に委託することを指します。
一方、BPOは、人事や経理といったバックオフィス業務をまとめて外部に委託するものです。これにより、企業はコア業務に経営資源を集中させることができ、業務効率の向上とコスト削減の両立を図れます。
IT業界の人手不足でお悩みなら『CLOUD BUDDY』にご相談ください
IT業界の人手不足でお悩みなら『CLOUD BUDDY』にご相談ください。『CLOUD BUDDY』は定型業務だけでなく、非定型業務も含めてさまざまな業務のBPOサービスに対応しています。
自社の従業員は、委託した業務をマネジメントする必要はありません。そのため、業務進捗の管理負担から解放され、コア業務に注力可能です。
また、人手不足で採用コストが高騰している現代において、低コストで自社に合うスキルを持ったアシスタントをリソースとして社外に確保できるのもメリットです。月毎の稼働時間カウントによる定額制なので、予算をコントロールしやすいでしょう。
まとめ｜人手不足の現状を踏まえた企業戦略の方向性
IT業界が直面する人手不足は、単なる一時的な問題ではなく、今後ますます深刻化する可能性があります。この課題に対応するためには、企業は従来の採用戦略に加えて、多角的なアプローチを組み合わせることが不可欠です。
具体的には、業務を自動化するDX推進、外国人エンジニアの積極的な採用、そして既存従業員のリスキリング強化といった対策が求められます。これらの取り組みを複合的に進めることで、限られたリソースを最大限に活用し、生産性を高めることができるでしょう。
企業は、中長期的な視点に立ち、人材育成への投資と効率的な業務運営を両立させることで、持続的な成長を実現していくことが可能になります。
