中小企業の経理業務では、限られた人員で多岐にわたる処理をこなさなければならず、日々の業務に追われている担当者も多いのではないでしょうか。紙やExcelでの管理が中心となり、特定の社員に業務が集中してしまうといった課題を抱えている企業も少なくありません。経理業務の属人化や非効率な処理方法は、ミスの発生リスクを高めるだけでなく、企業の成長を妨げる要因にもなります。
この記事では、中小企業によくある経理の課題から属人化防止と効率化のポイント、さらには課題解決に役立つツール例まで詳しく解説していきますので、自社の経理業務改善に向けた具体的な施策を検討する際の参考にしてください。
目次
Toggle中小企業によくある経理の課題
中小企業の経理部門では、大企業とは異なる独自の課題に直面しているケースが多く見られます。限られた予算や人員の中で業務を遂行しなければならず、システム導入や業務改善が後回しになってしまいがちです。
ここからは、中小企業の経理業務で特に顕著な3つの課題について詳しく見ていきましょう。これらの課題を理解することで、自社が抱える問題点を明確にし、適切な改善策を見つける手がかりになります。それぞれの課題がどのような影響を及ぼすのか、具体的な状況とともに解説していきますので、自社の経理体制と照らし合わせながら確認してみてください。
紙・Excelでの管理が中心でデータが分散
多くの中小企業では、経理業務を紙の帳簿やExcelで管理しており、データが複数の場所に分散してしまっている状況が見られます。請求書や領収書は紙で保管し、会計データはExcelファイルに入力し、銀行の取引明細は別のファイルで管理するといった形で、情報が一元化されていません。
データが分散していると、月次決算や年次決算の際に各所からデータを集めて突合する作業が発生し、時間がかかってしまうでしょう。Excelでの管理は手軽に始められる反面、入力ミスや数式の誤りが発生しやすく、気づかないまま間違った数値で判断してしまうリスクもあります。
ファイルのバージョン管理も難しく、複数の担当者が同じファイルを編集すると、どれが最新版か分からなくなる問題も起こりがちです。紙の書類は保管スペースを占有するだけでなく、必要な書類を探すのに時間がかかり、紛失のリスクも伴います。データの分散は経理業務の効率を低下させる主要な要因といえるでしょう。
特定の社員に依存する属人化
中小企業の経理部門では、長年担当している社員が一人ですべての業務を把握しており、その社員に依存する属人化が深刻な課題となっています。経理の流れや処理方法が明文化されておらず、担当者の経験と記憶だけが頼りという状況では、その社員が休暇を取ったり退職したりすると業務が停滞してしまいます。
新しい担当者を採用しても、引き継ぎがスムーズに進まず、一人前になるまでに長い時間がかかってしまうでしょう。属人化が進むと、業務の進め方や判断基準が担当者個人の裁量に委ねられるため、処理のばらつきやミスが発生しても気づきにくくなります。
経営者が経理の状況を把握したくても、担当者から報告を受けるまで分からず、リアルタイムでの経営判断が難しくなる問題もあります。属人化を解消しないまま放置すると、担当者の急な退職や長期休暇の際に経理業務が混乱し、取引先への支払いや請求業務に支障をきたすリスクが高まりかねません。
業務改善の主体者がいない
中小企業では経理業務の改善を推進する専任担当者がおらず、日々の処理に追われて改善活動まで手が回らないケースが多く見られます。経理担当者は月次の締め処理や支払業務、税務申告といった期限のある業務に追われており、業務プロセスを見直したりシステム導入を検討したりする時間を確保できません。
経営者も本業に専念しており、経理業務の細かな課題まで把握しきれていない状況があるでしょう。改善の必要性は感じていても、具体的に何から手をつければよいか分からず、結局現状維持のまま時間が過ぎてしまいます。外部の専門家に相談する予算や余裕もなく、内部だけで解決しようとしても知識やノウハウが不足しているため、効果的な改善策を立案できないケースも少なくありません。
業務改善の主体者が不在のまま放置すると、非効率な処理方法が固定化され、ミスの発生や業務負荷の増加といった問題が深刻化していきます。経理業務を改善するには、改善活動を推進できる体制を整えることが重要です。
中小企業における経理の属人化防止と効率化のポイント
中小企業の経理業務における課題を解決し、属人化を防ぎながら効率化を実現するためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。
ここからは、実際に効果が期待できる3つのポイントについて詳しく解説していきましょう。これらのポイントを実践することで、経理業務の質を向上させながら担当者の負担を軽減できます。順番に見ていきますので、自社での導入を想定しながら確認してみてください。それぞれのポイントが相互に関連し合い、総合的な改善につながっていきます。
業務の属人化を防ぐ「見える化」とマニュアル化を意識する
経理業務の属人化を防ぐためには、業務プロセスを見える化し、誰でも対応できるようマニュアル化することが不可欠になります。まず現在の業務フローを図式化し、どのような手順で処理を進めているか明確にしましょう。
各業務について、処理方法や判断基準、注意点などを詳細に記録したマニュアルを作成することで、担当者が変わっても同じ品質で業務を遂行できるようになります。マニュアル作成の際は、専門用語を避けて分かりやすい表現を使い、画面キャプチャや図解を活用することで理解しやすい内容にするとよいでしょう。
定期的にマニュアルを見直し、業務フローの変更や法改正に対応して更新することも重要になります。業務の見える化により、ムダな工程や重複している作業も発見でき、プロセス改善のヒントも得られるでしょう。複数の担当者で業務を分担できる体制を整えることで、特定の社員への依存度を下げ、リスク分散にもつながります。
経費精算・請求処理をワークフロー化する
経費精算や請求処理といった定型業務をワークフロー化することで、処理の標準化と効率化を同時に実現できます。ワークフローシステムを導入すると、申請から承認、処理完了までの流れがシステム上で管理され、誰がどの段階で承認すべきか明確になります。
申請者は必要な情報を入力フォームに従って登録するだけでよく、紙の書類を作成して回覧する手間が省けるでしょう。承認者には自動的に通知が届くため、承認漏れや遅延を防げます。処理状況もリアルタイムで確認でき、どこで止まっているか一目で把握できるため、スムーズな進行が期待できます。ワークフロー化により処理のログが自動的に記録され、後から確認や監査が必要になった際にも対応しやすくなるでしょう。
承認ルールをシステムに設定しておくことで、金額や部門に応じた適切な承認フローを自動的に適用でき、ガバナンスの強化にもつながります。ワークフローシステムの導入は、業務の透明性向上と処理時間の短縮を実現する有効な手段といえます。
改善を推進できる「外部リソース」を使う
経理業務の改善を進めるには、社内だけで完結させようとせず、外部の専門家やサービスを活用することも有効な選択肢となります。税理士や公認会計士といった専門家に相談することで、法令に準拠した適切な処理方法や、業務改善のアドバイスを得られるでしょう。
経理のアウトソーシングサービスを利用すれば、記帳代行や給与計算といった定型業務を外部に委託し、社内の経理担当者はより重要な業務に集中できるようになります。クラウド会計システムのベンダーが提供する導入支援サービスを活用することで、スムーズにシステム移行を進められ、操作方法の研修も受けられます。
経理業務に詳しいコンサルタントに業務診断を依頼すれば、客観的な視点から課題を洗い出し、効果的な改善策を提案してもらえるでしょう。外部リソースを活用する際は、コストと効果を比較検討し、自社にとって最適な支援形態を選択することが重要になります。外部の知見を取り入れることで、社内では気づけなかった改善ポイントを発見できます。
経理の課題を解決するのに役立つツール例
中小企業の経理業務における課題を解決するためには、適切なツールを導入することが効果的な手段となります。
ここからは、実際に多くの中小企業で活用され、経理業務の効率化に貢献している代表的なクラウド会計ツールを3つ紹介していきます。各ツールの特徴や機能を理解することで、自社の課題や予算に合ったツール選定の参考になるでしょう。
導入を検討する際は、無料トライアルを活用して実際の操作感を確認することをお勧めします。それでは具体的なツールを見ていきましょう。
①弥生会計Next|請求書作成や経費精算まで自動化を実現
弥生会計Nextは、中小企業向けのクラウド会計ソフトとして長年の実績を持つ弥生シリーズの最新版であり、請求書作成から経費精算まで幅広い業務を自動化できます。銀行口座やクレジットカードと連携することで、取引データを自動的に取得し、AIが勘定科目を推測して仕訳候補を作成してくれるため、入力作業の手間を削減できるでしょう。
請求書や見積書の作成機能も充実しており、テンプレートを使って簡単に作成でき、メールでの送付やPDF出力にも対応しています。経費精算機能では、スマートフォンでレシートを撮影するだけでデータ化され、自動的に経費申請が作成されるため、従業員の手間も軽減されます。
消費税の自動計算や電子帳簿保存法への対応など、法令に準拠した機能も備えており、安心して利用できるでしょう。サポート体制も充実しており、電話やメール、チャットで操作方法や経理処理について相談できるため、経理の知識が少ない方でも安心して導入できます。
出典参照:会計・経費・請求。 誰でもカンタンまとめて効率化。 弥生会計 Next|弥生株式会社
②かんたんクラウド会計|簡単操作で経理処理や仕訳入力を楽に
かんたんクラウド会計は、その名の通り簡単な操作で経理処理ができることを重視して開発されたクラウド会計システムであり、経理の専門知識がなくても使いこなせる設計になっています。直感的なユーザーインターフェースにより、初めて会計ソフトを使う方でも迷わず操作でき、仕訳入力も分かりやすい画面構成で進められるでしょう。
自動仕訳機能では、銀行口座やクレジットカードの取引データを取り込み、過去の仕訳パターンを学習して自動的に仕訳を提案してくれるため、入力の手間を省けます。複数の事業所や部門を管理する機能も備えており、拠点ごとの収支を把握したい場合にも対応できます。
決算書や試算表といった各種帳票も自動的に作成され、経営状況をリアルタイムで確認できるため、迅速な経営判断に役立つでしょう。クラウドベースのシステムであるため、インターネット環境があればどこからでもアクセスでき、税理士との情報共有もスムーズに行えます。導入費用も抑えられており、中小企業にとって導入しやすいツールといえます。
出典参照:かんたんクラウド会計 | 株式会社ミロク情報サービス
③ジョブカン会計|クラウド環境でリアルタイムの情報共有を支援
ジョブカン会計は、勤怠管理システムで知られるジョブカンシリーズの会計システムであり、クラウド環境でのリアルタイムな情報共有を強みとしています。複数の担当者が同時にアクセスして作業できるため、経理業務を分担して効率的に進められるでしょう。
ジョブカンシリーズの他のサービスと連携できる点も特徴であり、勤怠管理システムと連携することで給与計算に必要な勤怠データを自動的に取り込めます。経費精算システムとも連携でき、承認された経費データを会計システムに自動で反映できるため、二重入力の手間を省けます。
仕訳入力では、頻繁に使う仕訳パターンをテンプレートとして登録しておくことで、同じような取引を素早く入力できるでしょう。財務諸表や試算表はリアルタイムで更新され、常に最新の経営数値を確認できるため、月次決算の早期化にも貢献します。税理士とのデータ共有も簡単に行え、顧問税理士に随時データを確認してもらいながら処理を進められる点も安心です。
出典参照:軽快な操作性を実現!会計業務 を 効率化|株式会社DONUTS
中小企業における経理の課題は『CLOUD BUDDY』へご相談ください
経理業務の効率化や属人化の解消を進めたいものの、どのように取り組めばよいか分からない、適切なツールの選定に悩んでいるといった課題をお持ちではないでしょうか。
『CLOUD BUDDY』では、中小企業の経理業務改善を専門的に支援しています。現状の業務分析から課題の特定、改善計画の策定、ツールの選定と導入支援、運用定着まで一貫してサポートできるため、確実に効果を出せる改善を実現します。豊富な支援実績に基づいた実践的なアドバイスを提供し、御社の状況に最適なソリューションをご提案いたします。まずはお気軽にご相談ください。
まとめ|経理の課題をクリアして効率化を目指そう
中小企業の経理業務では、紙やExcelでの管理によるデータの分散、特定社員への依存による属人化、業務改善の主体者不在といった課題が見られます。これらの課題を解決するには、業務の見える化とマニュアル化、ワークフロー化の推進、外部リソースの活用が効果的なポイントとなるでしょう。
弥生会計Nextやかんたんクラウド会計、ジョブカン会計といったクラウドツールを導入することで、経理業務の自動化と効率化を実現できます。経理業務を改善することは、担当者の負担軽減だけでなく、経営判断の迅速化や企業の成長基盤強化にもつながります。自社の課題を明確にし、適切な施策を選択して改善を進めていきましょう。






