税理士事務所の経営者であれば、スタッフの人手不足に頭を抱えている方は少なくないのではないでしょうか。新しく人材を採用したいと考えていても、採用活動がうまくいかず、現在のスタッフに負担が集中している状況が続いているかもしれません。
実は、この人手不足が組織全体に深刻な影響をもたらしており、単なる人数の問題ではなく、業務効率の低下や従業員のストレス増加につながっていきています。
本記事では、人手不足がなぜ業務過多を招き、どのような悪影響をもたらすのかについて詳しく解説します。さらに、実際に業務過多を改善するための具体的なツールや対策についても紹介していきますので、自社の状況改善に役立てていただきたいと思います。
なぜ人手不足が業務過多を生むのか？
税理士事務所において人手不足は、単に人数が減ることだけを意味しません。スタッフの数が限られていると、一人当たりが担当する業務量が必然的に増加してしまいます。
この状況が継続すると、業務過多へと発展し、最終的には組織全体の運営が困難になる悪循環に陥りかねません。人手不足が業務過多を招く背景には、複数の要因が絡み合っており、それぞれを理解することが改善への第一歩となります。
退職・採用難による「仕事の穴埋め」
スタッフが退職してしまうと、その人が担当していた業務を誰かが担う必要があります。新しい人材を採用できれば問題ないのですが、現在の採用市場は売り手市場となっており、希望する人材を獲得することが非常に難しい時代になっています。
特に税理士事務所では、専門知識や実務経験が求められるため、即戦力となる人材の確保がより一層困難な傾向にあります。そのため、退職者が生じた場合、既存のスタッフが穴埋めを余儀なくされる状況が多く見られます。
この穴埋めは一時的な措置のはずが、採用が進まないまま月日が経過し、いつの間にか恒常的な業務負担となってしまいかねません。結果として、残されたスタッフは通常の業務に加えて、追加の責任を抱えることになり、業務過多へとつながっていきます。
性的な残業・休日出勤の常態化
人手不足に陥ると、限られた人数で多くの業務をこなす必要があるため、必然的に残業時間が増加します。さらに繁忙期には休日出勤も増え、スタッフのプライベート時間が大幅に圧迫されてしまいます。
最初は一時的な対応のつもりでも、これが常態化してしまうと、スタッフにとっては非常な負担になりかねません。仕事と生活のバランスが失われ、疲労が蓄積してしまうでしょう。この状態が続くと、スタッフのモチベーションは低下し、さらに離職につながるリスクが高まってしまいます。また、疲れた状態で業務を行うことにより、ミスが増加したり、作業品質が低下したりする傾向も見られるようになるでしょう。
属人化・アナログ業務が改善を阻む
税理士業界では、まだ属人化した業務やアナログ業務が多く残されているケースが少なくありません。特定の人物しかできない業務や、紙ベースで処理されている業務があると、その人が不在になった場合に対応できなくなってしまいます。
このような属人化やアナログ業務が存在していると、人手不足の状況下では特に大きな課題となります。なぜなら、引き継ぎに時間がかかり、新しいスタッフの育成が難しくなるからです。
また、アナログ業務を手作業で行っている限り、業務の効率化には限界があります。たとえ新しい人材を採用できても、育成期間が長ければ、その間も既存スタッフの負担は軽くならないでしょう。このように、属人化とアナログ業務が改善されないままでは、根本的な人手不足対策が難しい状況が生まれてしまいます。
業務過多がもたらす悪影響
人手不足から生じた業務過多は、組織全体に対して様々な悪影響をもたらします。これらの悪影響は互いに関連し合い、さらに問題を深刻化させていく傾向があります。
そのため、業務過多によってどのような悪影響が生じるのかを理解することで、早期の対策が必要であると認識できるようになるでしょう。
社員のストレス・離職率の上昇
業務過多が続くと、社員の心身に深刻な影響を及ぼします。限られた時間内で過剰なタスクをこなすことを強いられることで、慢性的な疲労感や焦燥感が蓄積し、燃え尽き症候群（バーンアウト）に陥るケースも少なくありません。特に繁忙期には残業時間が増加し、長時間労働による睡眠不足や集中力の低下が顕著になります。こうした状態が続けば、心身のバランスを崩し、うつ病や不安障害などのメンタルヘルス不調を引き起こす危険性も高まります。
さらに問題なのは、離職率の急上昇です。過度なストレスを感じる環境では、「このままでは自分が壊れてしまう」と感じて転職を決意する社員が増加します。特に税理士業務のように専門知識を持つ人材は、他社からの引き抜きや転職先の選択肢も多く、優秀な人材から先に離れていく傾向が強いです。結果として、人手不足がより深刻化し、残された社員にさらなる負担がかかるという負のスパイラルに陥ります。
この悪循環を放置すれば、組織全体の士気が低下し、離職率の上昇に歯止めがかからなくなる危険性があります。「疲弊する組織文化」が定着してしまう前に、早期の対策が不可欠です。
生産性・品質の低下
疲弊した状態での業務遂行は、確実に生産性の低下を招きます。集中力が落ち、判断力が鈍ることで、ミスや確認漏れが増加します。税理士業務においては、たった一つの数字の誤りが顧客企業の決算や税務申告に深刻な影響を及ぼすこともあり、信用問題に直結しかねません。ミスの修正対応に追われることで、さらに時間と労力が浪費され、結果的に業務効率が大幅に低下します。
また、過剰な業務に追われることで「とりあえず終わらせる」という意識が蔓延し、品質よりもスピードを優先する風潮が生まれやすくなります。その結果、顧客からの信頼が損なわれ、クレームや契約解消といった経営リスクに発展しかねません。
さらに、疲れ切ったスタッフは新しい発想や提案をする余裕を失い、イノベーションが生まれない職場へと変わっていきます。顧客への提案力が弱まり、他社との差別化が困難になるだけでなく、組織全体が「現状維持」しかできない停滞モードに陥りかねません。
短期的には業務の遅延や品質低下、長期的には顧客離れ・収益悪化という形で、企業の競争力そのものが損なわれていく危険性があります。
組織の成長停滞
人手不足による業務過多が常態化すると、組織は確実に「守りの姿勢」に入り、成長の機会を失います。スタッフが既存業務に追われているため、新規事業や業務改善、デジタル化への投資などに手が回らなくなり、結果として競合他社との格差が拡大していきます。経営層も現場対応に追われ、中長期的な戦略立案が後回しになりがちです。
特に、税理士法人や会計事務所では、法改正・システム更新などの外部変化への対応スピードが求められる中で、変化に取り残されるリスクが非常に高いといえます。これにより、業界全体のトレンドに乗り遅れ、顧客から「古い」「対応が遅い」という印象を持たれる危険もあります。
さらに、教育やスキルアップのための時間が取れなくなることで、スタッフの専門性が停滞し、組織全体の知的資産が枯渇していきます。成長の機会を奪われた社員はモチベーションを失い、「このままここにいても成長できない」と感じて離職する可能性も高まります。
このような状態が続けば、組織は内側から衰退していきます。短期的な人員不足が、やがては組織の将来を左右する致命的な経営リスクへと発展しかねません。
人手不足・業務過多を改善する主なツール例
業務過多の改善には、人手不足を補うための対策が不可欠です。現在、市場には様々な業務効率化ツールが存在しており、これらを活用することで、限られたリソースを最大限に活用することができます。
ここでは、税理士事務所に特に有効と考えられるツール例を紹介していきます。
①UiPath｜ルーティン業務の自動化におすすめ
UiPathは、ロボティック・プロセス・オートメーション（RPA）ツールの一種です。簡潔に説明すれば、定型的で繰り返される業務をシステムが自動で行うという技術になります。
例えば、データ入力や帳簿整理、レポート作成といったルーティン業務は、UiPathを導入することで、人間が介入せずに自動処理される仕組みが実現します。これらの業務は時間がかかる上に、ヒューマンエラーが起こりやすい特徴があるため、自動化の効果が特に高いといえるでしょう。
UiPathを活用することで、スタッフはこれらのルーティン業務から解放され、より付加価値の高い業務、例えば顧客コンサルティングや税務戦略の立案といった、人間にしかできない仕事に集中できるようになります。結果として、組織全体の生産性が向上し、人手不足の圧迫感が大幅に軽減されるでしょう。
出典参照：エージェントによる自動化の未来を創造する｜UiPath株式会
②Zendesk｜チャットでの顧客対応・社内問い合わせを自動化
Zendeskは、顧客サポートや社内問い合わせ対応を効率化するプラットフォームです。チャット機能を搭載しており、顧客からの質問や問い合わせに対して、自動で対応する仕組みが構築できます。
よくある質問に対しては、あらかじめ設定した回答が自動で返される形式であり、スタッフが一つ一つ対応する必要がなくなります。税理士事務所では、顧客から寄せられる質問の多くは、実は似たような内容であることが多いものです。こうした頻出質問に対する対応を自動化することで、スタッフの対応負担は減少します。
また、社内問い合わせの対応も自動化できるため、事務作業の削減にもつながるでしょう。Zendeskを導入することで、対応品質が一定レベルに保たれ、顧客満足度も向上する傾向が見られます。
出典参照：AIエージェントでサービスをもっとシンプルに｜株式会社Zendesk
③ジョブカンワークフロー｜社内申請や稟議書などの効率化に
ジョブカンワークフローは、社内の申請手続きや稟議承認プロセスをデジタル化するツールです。従来は、紙ベースで申請書を作成し、複数の承認者に手渡していくという煩雑なプロセスが必要でした。このツールを導入することで、デジタル上で申請から承認までを一元管理できるようになります。
申請者は必要な情報を入力するだけで、承認者へ自動で通知が送られ、スムーズに承認プロセスが進行します。特に税理士事務所では、給与申請や経費精算、各種届け出など、申請業務が多く発生します。これらの業務を効率化することで、事務作業に費やされていた時間を削減できるでしょう。ジョブカンワークフローは、属人化を減らし、業務の透明性を高める効果もあります。
出典参照：申請・承認にかかる時間を約 1 / 3*に削減｜株式会社DONUTS
税理士業界の人手不足解消は『CLOUD BUDDY』へご相談ください
人手不足や業務過多の問題は、一朝一夕には解決しない複合的な課題です。しかし、上述したようなツールを戦略的に導入することで、確実に改善へ向かうことが可能です。
『CLOUD BUDDY』は、人手不足解消に向けた業務効率化ソリューションを提供する企業として、多くの事務所のお悩みに対応してきた実績があります。貴社の具体的な業務課題を丁寧にヒアリングし、最適なツール導入と運用支援を行うことで、組織全体の生産性向上をサポートいたします。人手不足に悩む税理士事務所は、ぜひ一度『CLOUD BUDDY』へお気軽にご相談ください。
まとめ｜業務効率化で税理士の人手不足問題に対応しよう
税理士業界における人手不足は、単なる採用の問題ではなく、業務効率化によってアプローチすることが重要です。人手不足が生じると、必然的に業務過多へと発展し、スタッフのストレス増加や離職率上昇につながってしまいます。これが組織全体の生産性低下や成長停滞をもたらす悪循環となりかねません。
しかし、RPA技術やチャットボット、ワークフロー管理などのツールを活用することで、この悪循環を断ち切ることが可能です。限られたリソースを最大限に活用し、スタッフが本来の付加価値の高い業務に注力できる環境を整備することが、組織の長期的な成長につながるでしょう。
