日本の労働生産性は国際的に見て低水準であり、多くの企業が「見えないムダ」を抱えています。業務の属人化や長時間労働、デジタル化の遅れなどが労働生産性を低下させ、企業の成長を妨げる要因です。
本記事では労働生産性が低下する理由7つと、すぐに実践できる効果的な改善策を解説します。労働生産性が低下する理由を知り、生産性を向上させることは企業の競争力強化と従業員の働きやすさを両立させる鍵となるでしょう。
目次
Toggleなぜ日本の労働生産性は低いのか?現状と背景
労働生産性が低下する理由には、投入した労働力に対して十分な成果を得られないことが関係しています。
労働生産性の計算方法は「労働生産性=成果(売上、利益、付加価値)÷労働投入量(従業員数、労働時間)」です。計算式に当てはめると、成果を上げるためには少ない労働量で効率よく高い成果を出すことが必要だとわかります。
労働生産性は物的と付加価値の2種類に分けられる
労働生産性が低下する理由を理解するには、まず労働生産性の2つの種類を知ることが重要です。
1つは『付加価値労働生産性』です。これは、生産活動で生まれる金銭的な価値、つまり仕入れや加工などにかかるコストと販売額の差を指します。
もう1つは『物的労働生産性』です。労働者1人あたりが生み出す生産量・販売金額を示します。例えば、1人あたりの生産量が10個と20個では、後者の方が物的労働生産性は高いといえるでしょう。
日本の労働生産性はOECD加盟国38カ国中29位
日本の労働生産性が低下しているとされる根拠は、OECD加盟国38カ国中29位という低い順位にあります。『労働生産性の国際比較2024』によると、2023年の日本の時間あたり労働生産性は56.8ドルで29位に位置しています。
さらに、1人あたりの生産性は92,663ドル(約877万円)で32位です。この結果は、日本の生産性は他の先進国に比べて低迷しており、改善が必要であることを示しています。
参考:公益財団法人日本生産性本部|労働生産性の国際比較2024 | 調査研究・提言活動
業種別の生産性にも大きな格差がある
業種別でも労働生産性には大きな差があります。例えば、不動産業や金融業、情報通信業など資本を多く使う業種は効率よく働けるため生産性が高い傾向です。一方、飲食業や建設業、社会福祉業など人手を多く必要とする業種は生産性が低くなることが多いです。
この差は業種ごとの働き方と求められる労働力によるもので、改善には業界特有のアプローチが必要でしょう。
参考:公益財団法人日本生産性本部|主要産業の労働生産性水準の推移
労働生産性が低下する理由は何か?よくある7つの原因
労働生産性が低下する問題は、企業にとって重大な課題です。そもそも、なぜ生産性が低下してしまうのでしょうか。
その理由として、業務の属人化や長時間労働の常態化、デジタル化の遅れなどが挙げられます。次の見出しでは、よくある7つの原因を深堀りして解説します。
1.業務の属人化が進んでいる
労働生産性が低下する理由の1つ目は、業務が特定の担当者に依存している『属人化』状態になっていることです。属人化状態では、その人の不在の際に業務が完全に停滞してしまいます。
また、マニュアルと手順書が整備されておらず、知識とノウハウが個人に蓄積されたままになっているケースも少なくありません。属人化が進むと業務改善の機会も失われ、非効率的です。
2.長時間労働の常態化
労働生産性が低下する理由2つ目は、日本では「長時間働く人は勤勉」という風潮が根強く残っており、常態化していることです。働き方改革で残業時間の上限規制が設けられましたが、多くの職場では依然として残業が当たり前の文化です。
長時間労働が続くと従業員の集中力は低下し、判断ミス・操作ミスが増加します。疲労の蓄積はクリエイティブな発想力も奪い、効率の悪化につながるでしょう。
3.デジタル化の遅れ
労働生産性が低下する理由3つ目は、日本企業におけるデジタル化の遅れです。レガシーシステム(古いシステム)を使い続けているケースが多く、運用効率が悪化しています。
IT化を進めていても、部署ごとに独立したシステムを使用しているため、データの転記作業と連携の手間が生じていることもあります。給与明細の手渡しや紙ベースの申請承認などのアナログさも効率が低下する要因です。
4.非効率な業務体制
労働生産性が低下する理由4つ目は、意思決定権の上層部への集中と、現場での限られた裁量です。「上長の判断を仰がなければ業務を進められない」という状況は、業務の停滞を招く要因です。
また、チームワークを重視するあまり、個人の責任範囲が曖昧になりがちなことも非効率さを生んでいます。メンバーのフォローに時間を取られ、本来の業務に集中できないケースも少なくありません。
5.評価制度に問題がある
労働生産性が低下する理由5つ目は、多くの日本企業ではいまだに年功序列の給与体系が根強く残っていることです。勤続年数で自動的に昇給する仕組みや労働時間の長さを評価する傾向は、効率的に働くための動機づけを減らしてしまいます。
成果に対する客観的な評価基準が不明確なケースも多いです。何を『成果』とするのか社員に伝わっていないと、各自が最適な方向へ努力できません。
6.企業文化とマネジメントの課題
労働生産性が低下する理由6つ目は、企業文化やマネジメントの課題です。働き方が多様化している今も、「無理をすることは美徳」という考えが定着しています。残業を前提にした計画が組まれ、効率よりもコスト削減が優先されています。
経営者・マネージャーの意識改革が実現されなければ、労働生産性の低下が避けられません。優秀な人材を採用し、柔軟な組織を構築することは難しいでしょう。
7.付加価値を生み出す力が不足している
労働生産性が低下する理由7つ目は、付加価値創出力の不足です。高度経済成長期には労働者数と労働時間を増やすことで生産性を向上させましたが、知識集約型社会では通用しません。
ナレッジワーカー(知識労働者)が増加する今、創造性やイノベーション力、専門知識を活かした問題解決能力など、質的向上が求められています。多くの企業ではそうした能力開発と環境整備が不十分なのが現状です。
労働生産性の低下を放置するとどうなる?
労働生産性が低下したまま放置すると、どのような影響があるのでしょうか。労働生産性が低下すると、企業にさまざまな影響が生まれます。
生産性の低下は、業務効率の悪化やコストの増加、従業員の負担増など、企業の競争力を削ぐ要因となります。これら3つの弊害について、以下より詳しく見ていきましょう。
残業と人件費の増加で賃金コストが増える
労働生産性が低下すると、製品・サービスを生み出すのに多くの時間が必要です。日本の企業では、給与が時間換算で支払われる場合が多く、長時間働けば働くほど支払いが増加します。
もし、労働時間に見合った生産量が得られなければ、コストばかりが増加し、利益が得られない状況に陥る可能性があります。最終的に、労働時間の増加は無駄なコストを生み出し、経営に悪影響を及ぼしてしまうでしょう。
従業員への負荷が増加し生産性をさらに低下させる
労働生産性が低い状態が続くと、従業員一人ひとりの業務量が増え、負担が増加します。過度な残業または休日出勤が続けば、従業員は疲れとストレスが溜まり、仕事に対するモチベーションが低下します。悪循環が続くと、生産性はさらに低下し、業務の質も悪化してしまうでしょう。
結果として、従業員の心身に悪影響を与え、離職を引き起こすことにもつながり、組織全体の活力が失われる恐れがあります。
経済力が低下し企業の競争力が失われる
労働生産性が低下すると、企業全体の経済力にも影響を与え、事業の存続が危うくなります。付加価値を生み出せず、企業の「稼ぐ力」が低いと、労働時間に対して十分な成果を出せず、売上を増加させることが困難です。
コストを増加させても、売上が伸びなければ利益が圧迫されます。この悪循環が続くと、企業は競争力を失い、ひいては日本全体の経済力の低下にもつながる可能性があるでしょう。
労働生産性を改善するには?今すぐできる7つの対策
労働生産性の低下は企業の競争力を弱める大きな要因です。しかし適切な対策を講じることで、生産性は確実に向上させられます。
業務の自動化やアウトソーシング、労働環境の改善、業務の標準化、給与体系の見直し、DXの推進、そして人材育成など、今すぐ実践できる7つの対策を詳しく解説します。
1.定型的な業務の自動化
定型業務を自動化することは、労働生産性向上の第一歩です。日々繰り返される作業は、人の手で行うと時間がかかるだけでなく、ミスも発生しやすくなります。RPAツールなどを活用して自動化を進めれば、処理スピードの向上とヒューマンエラーも減少できるでしょう。
さらに、単純作業から解放された社員が付加価値の高い仕事に集中できれば、組織全体の生産性が自然と向上していきます。
2.アウトソーシングの活用
全ての業務を自社で抱え込むことは、必ずしも効率的とは言えません。専門性の高い業務や一時的に発生する作業などは、アウトソーシングの活用が有効です。外部の専門家に任せることで、自社リソースをコア業務に集中させられます。
人材不足が深刻化する中では、即戦力となる人材を確保するよりも、外部委託する方が現実的な選択肢となるケースが増えています。
3.労働環境の改善
働きやすい環境づくりは、労働生産性向上に直結します。過剰な残業と特定社員への業務集中は、モチベーション低下と健康問題を引き起こし、組織全体の生産性が低下する原因です。
テレワークの導入や柔軟な勤務形態などの採用は、従業員の仕事と生活の調和を促進します。心身ともに健康な状態で働ける環境を整えることは、一人ひとりのパフォーマンス向上と離職率の低下にもつながるでしょう。
4.業務を標準化しマニュアル化する
業務の作業手順とフローを整理して可視化することで、誰が担当しても一定の品質を維持できるようになります。新入社員の教育においても、標準化された業務プロセスがあれば効率的に知識を共有できます。
また、担当者の突然の不在・退職にも対応しやすくなり、業務の属人化を防止可能です。標準化によって無駄な工程が見つかりやすくなるため、1度整備したマニュアルも定期的に見直すことで、労働生産性を向上できるでしょう。
5.給与体系の見直し
時間ベースの給与体系では「決められた時間を過ごせばいい」という意識が生まれがちです。成果や業績に連動した給与体系に見直すことで、限られた時間で最大限の成果を上げようという意識が芽生えます。評価制度の見直しも不可欠です。
長時間労働を是正するには、働いた時間ではなく、生み出した価値や成果に重きを置く評価への転換が必要なのです。
6.DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
DX推進は企業の生産性向上に欠かせない取り組みです。ITツールの導入により、情報共有のスピードと精度が向上し、業務効率は大きく改善します。
例えばビジネスチャットの活用は、従来の電話やメールよりも迅速なコミュニケーションを可能にします。決裁や業務指示もオンラインで完結させれば、不要な中断を減らし、集中力を維持できるでしょう。
7.個々のスキルの尊重と人材育成
従業員一人ひとりの強みを活かす組織づくりは、生産性向上の鍵となります。チーム単位の業務から個人の専門性を重視した体制へ移行することで、能力の発揮しやすい環境が整います。人材育成にも積極的に投資しましょう。
適材適所の人員配置も重要です。社員が自らの成長を実感できる環境こそ、持続的な生産性向上の基盤となるのです。
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まとめ|労働生産性が低下する理由を知り改善しよう
日本の労働生産性は国際的に見ても低い水準にあり、業務の属人化、長時間労働の常態化、デジタル化の遅れなど、複数の要因が影響しています。生産性の低下は残業や人件費の増加、従業員の負担増大、企業競争力の低下などの悪循環を引き起こします。
しかし、業務の自動化やアウトソーシング、労働環境の改善、DXの推進など効果的な対策を実施することで、生産性向上は可能です。また『CLOUD BUDDY』のようなサービスも活用しながら、企業の成長と従業員のワークライフバランスを両立させていきましょう。