「DXに取り組んでいても成果が出ない」、「DX推進のためにどのような施策を講じるのか分からない」
企業のDX推進を成功させるためには、デジタルスキル標準(DSS)を把握しておきましょう。
DSSは企業のデジタル化を推進するために欠かせない役割を果たします。
企業はこの基準を活用することで、デジタル人材の育成と競争力の強化につながるでしょう。
この記事ではデジタルスキル標準の構成要素や求められる背景などを解説します。
目次
Toggleデジタルスキル標準は2つの要素で構成される
デジタルスキル標準は、デジタル技術を活用するために必要なスキルを体系的に整理したもので、企業のDX推進において重要な役割を担います。
この標準は、「DXリテラシー標準」と「DX推進スキル標準」の2つの要素で構成されており、どちらもデジタル人材の育成や企業の競争力強化に欠かせません。
DXリテラシー標準
DXリテラシー標準は、デジタル社会で生き抜くための基本的な知識とスキルを定義しています。
具体的にはインターネットやクラウド技術、AI(人工知能)、データ活用など、基本的なデジタルツールや技術に関する理解が含まれます。
DXリテラシー標準を学ぶことで、業務効率化や新しい技術の導入に対する理解の深化が期待できるでしょう。
DX推進スキル標準
DX推進スキル標準は、企業内でのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するために必要な高度なスキルを定義しています。
具体的にDX推進スキルと定義されているのは戦略的な思考力、リーダーシップ、プロジェクトマネジメント、チームワークのスキルなどです。
企業がデジタル化を進めるうえでは、ただ技術を理解するだけではなく、組織全体での変革を進めるための能力が必要です。
特に、デジタル化を推進するリーダー層にはDX推進スキル標準で定義されているスキルが求められます。
デジタルスキル標準とITスキル標準との違い
デジタルスキル標準とITスキル標準の主な違いは目的、対象、内容です。。ITスキル標準が対象としているのは主にIT専門職です。
そして、技術的な知識や操作スキルに重点を置いています。
一方、デジタルスキル標準は、幅広いビジネスパーソンを対象にしており、重視しているのはデジタル技術を活用した業務改善や組織改革の能力です。
デジタルスキル標準が求められる背景
デジタルスキル標準が求められる背景には、主に次の2つの理由があります。
- DXが促進されているため
- DX推進に欠かせないIT人材が減少しているため
それぞれの理由を詳しく解説します。
DXが促進されているため
近年、企業や政府が積極的に促進しているのがDXです。
DXは、企業の競争力を高めるために不可欠な要素となっており、企業はデジタル技術を活用して新たな価値を創出につなげています。
このような状況の中では、DXに対応する人材が必要不可欠です。
デジタルスキル標準は、DXに対応できる人材に求められるスキルを明確にするものであり、企業のDX推進を支える基盤として期待されています。
また、知識や能力の標準化が進むことで、業界全体における人材育成が促進され、社会全体のデジタル化がより一層加速するでしょう。
DX推進に欠かせないIT人材が減少しているため
IT人材は不足傾向にあり、企業がDXを推進するために必要な専門的な技術を持った人材を確保することが難しくなっています。
そのため、企業は専門的なITスキルを持つ人材だけでなく、広く一般のビジネスパーソンに対してもデジタルスキルを身につけさせられるかが、成長のポイントです。
デジタルスキル標準は、IT専門職に限らず、すべてのビジネスパーソンが最低限身につけるべきデジタルスキルを明確化し、企業が抱えるIT人材不足の課題を解消する手段となるでしょう。
デジタルスキル標準の対象
デジタルスキル標準の対象となるのは、DXリテラシー標準、DX推進スキル標準とで異なります。
ここではデジタルスキル標準の対象についてみていきましょう。
ビジネスパーソン全体はDXリテラシー標準の対象
デジタルスキル標準の中でも、DXリテラシー標準はビジネスパーソン全体を対象としています。
この標準で定義しているのが、デジタル技術を理解し、それを実務に活かすための基本的な知識とスキルです。
具体的には、クラウドサービスやデータ分析、AI(人工知能)などの技術を業務に応用するための基礎的な能力が求められます。
DXリテラシー標準に基づいた学習を進めることで、企業全体でDXを推進できる人材の育成が可能となり、結果としてデジタル化の加速につながるでしょう。
DX推進スキル標準の対象となる5つの人材
DX推進スキル標準の対象となる5つの人材は次のとおりです。
- ビジネスアーキテクト
- データサイエンティスト
- デザイナー
- サイバーセキュリティ
- ソフトウェアエンジニア
それぞれの人材について解説します。
ビジネスアーキテクト
ビジネスアーキテクトは、企業のDX戦略を設計し、デジタル技術をビジネスにどう組み込むかを考える役割です。
企業のビジネスモデルやプロセスを分析し、デジタル技術の導入を通じて効率化や新たな価値の創出を実現します。
ビジネスアーキテクトは、戦略的思考と技術の融合能力が求められるため、企業のデジタル化を推進する重要なポジションといえるでしょう。
データサイエンティスト
データサイエンティストは、企業が保有する膨大なデータを分析し、そこから有益なインサイトを抽出する役割を果たします。
具体的にはデータを活用した意思決定支援を行い、企業の競争力を高めるための戦略的な提案を行います。
また、AIや機械学習、統計学などの高度な分析技術を駆使して、企業のDXを実現するための重要なスキルセットを提供するのもデータサイエンティストの役割です。
デザイナー
デザイナーは、企業の製品やサービスのユーザーインターフェースやユーザーエクスペリエンス(UX)を設計する役割を担います。
デジタル化が進む中で、顧客の体験をデザインするスキルは非常に重要です。
特に、ユーザー視点でのデザイン思考や、直感的で使いやすいインターフェースを設計する能力は、企業のDXを成功に導くために必要不可欠なスキルといえるでしょう。
サイバーセキュリティ
サイバーセキュリティ専門家は、企業のデジタルインフラやデータを保護するために必要なスキルを持つ人材です。
DXの進展に伴い、企業のシステムやデータに対するサイバー攻撃のリスクが高まっていくでしょう。
このような状況に対して、サイバーセキュリティの専門家は、セキュリティ対策を強化し、リスク管理や脅威の予測を行うためのスキルを提供します。
ソフトウェアエンジニア
ソフトウェアエンジニアは、企業がDXを推進するために必要なソフトウェアやアプリケーションの開発を担っている人材です。
ソフトウェアエンジニアは、プログラミング言語やソフトウェア開発フレームワークに精通しており、システムの設計・開発・運用を担当します。
特に、クラウド環境やモバイルアプリケーションなど、企業のDXに欠かせない技術を扱うため、柔軟な開発スキルとシステム全体を理解する能力が求められるでしょう。
デジタルスキル標準で習得すべき知識やスキル
デジタルスキル標準では、デジタル技術を活用するための知識やスキルが定義されています。
ここではデジタルスキル標準で習得すべき知識やスキルを解説します。
DXリテラシー標準は4つの項目に分けられる
DXリテラシー標準で習得できる要素は次のとおりです。
- マインド・スタンス
- Why
- What
- How
それぞれの要素について、詳しく解説します。
マインド・スタンス
マインド・スタンスは、デジタル化の進展に伴い、柔軟で前向きな思考を持つことの重要性を強調します。
デジタル技術を活用するには、従来の業務に対する固定観念を捨て、新たな価値創造のために積極的に技術を取り入れる姿勢が大切です。
企業文化や個人の思考を変えるためには、マインド・スタンスによるマインドセットが不可欠です。
Why
「Why」は、なぜデジタル技術を導入するのか、その目的や意義の理解を意味します。
デジタル技術の導入には、単なる効率化やコスト削減だけでなく、競争力の強化や市場への迅速な対応といった戦略的な背景があるでしょう。
企業がデジタル化を進める理由を明確にすることで、社員一人ひとりがその目的を理解し、行動に反映させることができます。
What
「What」は、デジタル技術が具体的に何をもたらすのか、どのようなツールや手法が利用されるのかを理解することです。
例えば、クラウドコンピューティングやAI(人工知能)、ビッグデータ解析など、具体的な技術やツールがどのように業務に活用できるかを知ることが求められます。
「What」を追及すれば実務で使える技術を選定し、適切に活用するスキルが身につきます。
How
「How」は、デジタル技術を実際にどう活用するか、その方法や手順を理解することです。技術を導入した後、それをどのように運用し、業務に組み込んでいくかが重要です。
例えば、システム導入後のトレーニングや業務プロセスの見直しなど、実際にデジタル技術を使って業務改善を行うための具体的な方法を学ぶことが求められます。
DX推進スキル標準は5つの項目に分けられる
DX推進スキル標準は、企業DXを成功させるために必要なスキルを5つの主要な項目に分けています。これにより、企業はDX推進に必要な人材育成とスキル強化を計画的に推進できるでしょう。
ビジネス変革
ビジネス変革は、企業がデジタル技術を活用して、従来の業務プロセスを改善し、組織の競争力を高めるために重要な要素です。
このスキルには、デジタル化を戦略的に進め、企業文化や業務フローを革新するためのリーダーシップと視点が求められます。
ビジネス変革を実現するためには、従来のアプローチを見直し、新しい技術を適応させる柔軟性と洞察力が求められます。
テクノロジー
テクノロジーに関するスキルは、DX推進において最も基礎的かつ重要な要素です。
企業は、クラウドコンピューティング、人工知能(AI)、ビッグデータ、IoT(モノのインターネット)などの最先端技術を効果的に活用する必要があります。
まずはテクノロジーに関するスキルを学び、各技術がどのように業務を改善し、効率化を進めるかについて深い理解を持ったうえで導入しましょう。
セキュリティー
企業は、サイバー攻撃や情報漏洩から企業データやシステムを守るために、セキュリティ対策の強化が欠かせません。
DX推進スキル標準におけるセキュリティー分野では、リスク管理、暗号化技術、アクセス管理などに精通し、デジタル技術を安全に活用できるスキルが求められます。
強固なセキュリティ対策を整えることで、企業は安心してデジタル化を促進可能です。
データ活用
データ活用は、DX推進の成功のカギとなる中核的なスキルで企業が保有する大量のデータを分析し、それをビジネスの意思決定に活用する能力が求められます。
データサイエンス、機械学習、統計学などの技術を駆使して、データから有益なインサイトを抽出し、経営戦略やマーケティング戦略に活かすことが企業の競争力を高めます。
パーソナルスキル
パーソナルスキルは、DX推進を支えるために不可欠な個々人の能力や態度です。
具体的には自己管理能力、問題解決能力、コミュニケーション能力、チームワーク能力などが含まれます。
パーソナルスキルはデジタルスキルだけでなく、ビジネスの変革を実現するためには、人間的なスキルが重要です。
特に、急速に変化するデジタル環境においては、柔軟に適応し、効果的にチームと協力できる能力が求められるでしょう。
デジタルスキル標準の活用例
デジタルスキル標準を実際に活用した例は次のとおりです。
- 株式会社ファミリーマート
- 出光興産株式会社
それぞれの活用例を紹介します。
株式会社ファミリーマート
株式会社ファミリーマートは激しく変化する事業環境の変化に対応するために、果敢にチャレンジする人材を求めていました。
こうした背景のもと、同社では「ビジネスアーキテクト」「データ活用人材」「システム開発推進人材」という3つの人材像を定義し、それぞれの育成に取り組んでいます。
また、単にDXを「学ぶ」「知る」にとどまらず、それを実際に応用できるようになるための育成にも力を入れています。
その結果、知識が蓄積されるだけでなく、職場で実際に活用できるスキルの習得へとつながっているのです。
参考:デジタルスキル標準(DSS)活用事例集、リンク集 | 独立行政法人情報処理推進機構
出光興産株式会社
出光興産株式会社は自社独自のDX推進プランを構築していました。
このような、同時のDX推進プランに必要なスキルを、DSSをカスタマイズして5つ設定しました。
また、目指す状態に向けて3つの熟練レベルを定め、段階に応じたトレーニングを提供することで、全従業員がDXについての共通言語を習得できています。
DXについてのスキルを全社的に底上げしたことで、ノーコードアプリの開発者数、開発数が増加しました。
参考:デジタルスキル標準(DSS)活用事例集、リンク集 | 独立行政法人情報処理推進機構
デジタルスキルでお悩みなら『CLOUD BUDDY』にご相談を
従業員のデジタルスキルは、デジタルスキル標準に則ったさまざまな施策によって向上可能です。
施策を講じるのが困難な場合は『CLOUD BUDDY』にご相談ください。
『CLOUD BUDDY』は専門性が必要な業務のアウトソースに対応しています。
導入にあたっての初期費用はかからず、月額の稼働時間に応じた費用のみが発生するため、予算管理もしやすくなるでしょう。
まとめ|デジタルスキル標準を活用して環境の変化に対応しよう
デジタルスキル標準は、デジタル技術を活用するために必要なスキルを体系的に整理していて、DXリテラシー標準とDX推進スキル標準で構成されています。
現代はDXが促進されているうえに、DX推進に欠かせないIT人材が減少している傾向にあるため、デジタルスキル標準に沿って、従業員のデジタルスキルを向上させるのが有効です。
デジタルスキル標準を活用して自社を取り巻く環境の変化に対応しましょう。