「業務の効率を上げたい」「業務品質を高めたい」「組織全体の生産性を向上させたい」など、課題を抱えている企業は多いのではないでしょうか。業務のやり方を見直し、抜本的に改善する「業務改革」は、企業の成長に欠かせない取り組みの一つです。単なる業務改善と異なり、業務改革は根本的な仕組みを変えることで長期的な成果を生み出せます。
本記事では、業務改革の基本的な考え方や思考プロセス、成功に導く3つのポイントを解説します。ぜひお役立てください。
業務改革とは

企業を取り巻く環境は変化し続けており、これまでのやり方を見直し改善する「業務改革」が注目を集めています。まずは、業務改革の概要や注目されている背景を解説します。
業務改革(BPR)の概要
業務改革(BPR)とは、組織全体の業務を抜本的に見直し、最適なプロセスへと変革する手法です。ビジネスプロセス・リエンジニアリング(Business Process Reengineering)の略称で、業務プロセス・情報システム・組織体制などの見直しなどが対象となります。
この取り組みにより、以下のような効果が期待できます。
- コストの削減
- 業務効率や生産性の向上
- 顧客や社員の満足度アップ
組織全体を見直すことで、無駄を減らし、より競争力のある企業へと成長できるでしょう。
業務改革が注目される背景
業務改革(BPR)が注目されている背景には、働き方改革の推進や労働人口の減少による人手不足があります。
この概念は1990年頃に広まり、多くの企業が取り組みを試みました。しかし、当時は定着せず、一部の企業でしか活用されませんでした。ところが、近年の社会情勢の変化により、民間企業や自治体でも再び業務改革の必要性が高まり、改めて注目されるようになっています。
業務改革には思考プロセスが役立つ

思考プロセスとは、成果を生み出す手順(プロセス)を可視化し、継続的に改善していく思考法です。これは、イスラエルの物理学者エリヤフ・ゴールドラットが提唱した「制約条件の理論(TOC)」に基づく問題分析手法の一つです。
業務改革を成功させるためには、論理的な思考プロセスが欠かせません。場当たり的に改革を進めても、根本的な解決にはつながらないでしょう。まずは現状をしっかり分析し、課題を明確にすることが重要です。そのうえで最適な手法を選び、段階的に実行していく必要があります。
さらに、効果を検証しながら改善を続けることで、持続的な業務改革が可能になります。
思考プロセスを活かした業務改革のメリット

業務改革に思考プロセスを取り入れることで、以下のようなメリットが得られます。
- 業務プロセスを最適化できる
- 業務効率化が期待できる
- 社内で共通認識を持ちやすい
それぞれ具体的に解説します。
業務プロセスを最適化できる
思考プロセスを活用すると、問題の本質を見極めたうえで、最適な業務プロセスを再構築できます。
例えば、承認までに時間がかかる業務プロセスがある場合、各承認ステップの担当者や必要性を分析することで不要なステップを削減できます。これにより、承認時間の短縮やミスの軽減が可能となり、より効率的な業務プロセスを実現できるでしょう。
業務効率化が期待できる
業務改革に取り組むことで、社員の負担を軽減し、作業時間を短縮できるのも大きなメリットです。
例えば、手作業で行っていたデータ入力を自動化すれば、業務に要する時間を削減できます。空いた時間をコア業務に集中することで業務品質が向上し、企業全体の競争力も高まるでしょう。このような改善は、長期的な成長にもつながります。
社内で共通認識を持ちやすい
業務改革を進める際には課題を整理し、どの業務にどの程度リソースを投入しているかを分析・可視化します。これにより、優先順位が明確になり、解決策を計画しやすくなるでしょう。
また、業務の課題や改善策を明確に示せば、社内での共通認識が生まれやすくなります。組織全体が同じ目標に向かって取り組めるため、業務改革がスムーズに進み、成果も出やすくなるでしょう。
業務改革の進め方【5ステップ】

業務改革の進め方は、以下の5つのステップです。
- 1.目標・目的を設定
- 2.現状の業務を分析
- 3.新業務プロセスの設計
- 4.新業務プロセスを実施
- 5.効果の測定・改善
業務改革はこれまでの業務プロセスを大幅に再構築するため、段階を踏み計画的に行うのがポイントです。業務改革の進め方について順を追って解説します。
ステップ1.目標・目的を設定
まずは目指すべき方向性を明確に設定します。ゴールが不明確なまま進めると、途中で迷いが生じ、効果的な施策を打ち出せません。現状の課題を洗い出し、どのような業務改革を実現したいのかを整理することから始めましょう。
例えば、業務効率化を目指す場合は、「手作業の工程を50%削減する」など、具体的な数値を設定すると良いでしょう。これにより関係者全員が同じ認識を持ち、改革の方向性がブレにくくなります。
ステップ2.現状の業務を分析
次に、どの工程に無駄があるのか、どこがボトルネックになっているのかを把握できれば、適切な改善策を考えやすくなります。
具体的には、業務プロセスを図式化し、各ステップの時間や手順を可視化する方法が有効です。現状を詳細に分析することで、改善すべきポイントが明確になり、次のステップにつながりやすくなるでしょう。
ステップ3.新業務プロセスの設計
分析したデータを基に、新しい業務プロセスを慎重に設計しましょう。単に業務を減らすだけではなく、効果的な流れを作ることが求められます。実現可能な形で設計しなければ現場が混乱し、逆に業務の効率が下がる可能性があります。
例えば、紙ベースの申請業務をデジタル化する場合はどのツールを導入するのか、どの段階で承認フローを実施するかなどを具体的に決めてください。また、現場の声を取り入れながら調整を行うことで、スムーズな移行が可能になります。
あわせてBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)など外部サービスを選択肢の1つとして検討するのも良いでしょう。
ステップ4.新業務プロセスを実施
設計した業務プロセスを実施する際は、適切な準備が必要です。例えば、新システムを導入する場合は、事前にテスト運用を行い現場のスタッフに使用方法を周知するとよいでしょう。
新業務プロセスを社内全体に周知せずに開始すると、戸惑いや反発が生じ、思うように進まない可能性があります。円滑に移行できるように、丁寧な説明と段階的な準備が必要です。
また、新業務プロセスを無理なく定着させることで、業務の効率化が実現し、現場の負担も軽減できるでしょう。
ステップ5.効果の測定・改善
新業務プロセスを実施した後は効果を測定し、必要に応じて改善を重ねましょう。例えば、業務のデジタル化を進めた結果、処理時間が短縮されたかどうかをデータで確認し、期待した効果が得られていない場合は改善策を検討してください。
効果の測定・改善を繰り返し行うことで業務プロセスが最適化できるでしょう。
業務改革を成功に導く3つのポイント

業務改革を成功に導くポイントは、以下の3つです。
- 現場と連携しながら進める
- 定期的にPDCAサイクルを回す
- BPOを活用する
それぞれ詳しく解説します。
1.現場と連携しながら進める
業務改革を成功させるためには、現場の理解と協力が不可欠です。経営陣が一方的に方針を決めても、実際に業務を行う社員が納得していなければ、改革は形だけのものになってしまいます。
現場の声を取り入れることで、業務の課題をより正確に把握でき、実効性の高い施策を立てやすくなります。
2.定期的にPDCAサイクルを回す
一度の業務改革で完璧な結果を得るのは難しいものです。計画を実行した後はPDCAサイクルを活用して定期的に効果を評価し、必要に応じて改善を加えましょう。
PDCAサイクルは以下の4ステップです。
- 計画(Plan)
- 実行(Do)
- 評価(Check)
- 改善(Act)
計画から改善を継続的に繰り返すことで、より効果的な業務改革が可能になります。
3.BPOを活用する
業務改革を進めるうえで、すべての業務を自社内で完結するのは難しい場合もあります。特に、専門的な知識やリソースが不足している場合は、BPOの活用が有効です。
外部の専門家に業務を委託することで、業務の効率化と品質向上が期待できます。
業務改革を実施する際の注意点

業務改革を実施する際の注意点は、以下の2つです。
- 初期費用やランニングコストを把握する
- 業務改革の必要性を社内に周知する
それぞれ見ていきましょう。
1.初期費用やランニングコストを把握する
業務改革の内容によっては、一定のコストが発生します。例えばクラウドシステムを導入する場合、初期費用が低くても、毎月の利用料が発生します。考慮せずに導入してしまうと、継続的な負担となってしまう可能性があります。
長期的な視点でコストを計算し、無理のない範囲で業務改革を進めるようにしましょう。
2.業務改革の必要性を社内に周知する
業務改革の成功には、社内全体の理解と協力が欠かせません。特に現場の社員が「なぜこの改革が必要なのか」を納得できなければ、効果的な運用は難しくなります。
目的やメリットを明確に伝え、改革への意欲を高めることが求められます。
業務改革に役立つフレームワーク

業務改革をより効率的に進めるには、フレームワークの活用も効果的です。さまざまな種類の中から、自社の課題に合ったものを選べば、より効果的に改革を進められるでしょう。
ここでは代表的なフレームワークを4つ紹介します。ぜひ業務改革にお役立てください。
(1)6W2H
6W2Hとは、以下の8つの要素を基に情報を整理し、不要な業務の発見やプロセスの改善につなげる手法です。
- Who(誰が)
- What(何を)
- When(いつ)
- Where(どこで)
- Why(なぜ)
- Whom(誰に)
- How(どのように)
- How much(いくらで)
例えば、受注業務の遅延が課題になっている場合、6W2Hを活用して分析すれば、原因を明確にできるでしょう。社員の負担が大きすぎるのか、それとも承認フローに時間がかかっているのかを特定し、具体的な改善策を考えることができます。
(2)ECRS
ECRSは業務改革の優先順位を決め、効率を向上させるための基本的な手法です。以下の4つの要素の頭文字を取ったもので、無駄を省くことを目的としています。
- Eliminate(排除)
- Combine(結合)
- Rearrange(再配置)
- Simplify(簡素化)
既存の業務プロセスを見直し、本当に必要な業務だけを残すことで、生産性を高められるでしょう。
(3)SWOT分析
SWOT分析は企業の現状を把握し、戦略的な業務改革を進めるのに有効なフレームワークです。以下の4つの視点から企業の強み・弱みを可視化し、分析を行います。
- Strengths(強み)
- Weaknesses(弱み)
- Opportunities(機会)
- Threats(脅威)
自社の優位性を活かしながら、課題解決に向けて戦略を立てることで、より効果的な業務改革を実現できるでしょう。
(4)シックスシグマ
シックスシグマは、業務の品質向上を目的としたフローワークです。統計的な手法を用いて業務プロセスの誤差を減らし、品質向上を目指します。シックスシグマはデータを基にした分析を行うため、ミスを軽減し、的確な業務改革を進められます。
特に品質を重視する業種では、シックスシグマの活用が有効です。
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まずはお気軽にご相談ください。
まとめ|業務改革を効果的に進め業務品質を高めよう
業務改革は、企業の成長に欠かせない重要な取り組みです。改革を進める際は、現場の意見を取り入れながら、社内全体で協力して取り組むことが大切です。適切なフレームワークや思考プロセスを活用すれば、より効率的に改革を進められるでしょう。
また、課題を定期的に見直しながら、必要に応じて『CLOUD BUDDY』を活用するのも効果的です。専門家のアドバイスを取り入れることで改革の精度が高まり、より最適な形で実現できるでしょう。
業務改革に取り組むことで業務品質を向上させ、企業の持続的な成長につなげていきましょう。