業務の棚卸しをする方法は?無駄・重複を徹底的に省く方法を解説

業務の棚卸しをする方法は?無駄・重複を徹底的に省く方法を解説
業務の棚卸しを行うことで、ムダな作業の削減やリソースの最適化、属人化の解消が可能になります。企業の業務改善に役立つ具体的な方法や事例をご紹介しています。

「働き方改革」「リモートワーク推進」といった言葉が一般化し、多くの企業が柔軟な働き方の実現を目指すようになりました。しかし、実際に制度を導入しても「形だけ」で終わってしまうケースも少なくありません。本当の意味で柔軟な働き方を実現するためには、既存業務の内容と流れを見直し、不要な作業や重複を削減しなければなりません。

その第一歩が「業務の棚卸し」です。業務の棚卸しとは何か、なぜ必要なのか、そして効果的に進めるための方法について、実践的な視点で解説します。この記事を読むことで、業務の構造を把握し、働きやすい環境づくりの基盤を整える手がかりが得られるでしょう。

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業務の棚卸しの定義と目的

業務の棚卸しとは、現在組織内で行われている業務内容を洗い出し、可視化し、必要性や効率性を評価するプロセスです。個人単位ではなくチームや部署ごとに行うことで、重複や非効率の把握が可能となり、全体最適を目指した業務再設計が可能になります。

目的は主に3つあります。1つ目は、業務の可視化によって社員の作業実態を明らかにすること。2つ目は、業務の無駄やボトルネックを発見し、改善機会を導き出すこと。そして3つ目は、柔軟な働き方を設計するための土台を作ることです。

業務の棚卸しは単なる作業リストの作成ではありません。働き方改革やDX推進のスタート地点として、組織の業務構造そのものを見直す重要な手段であるといえるでしょう。

業務の棚卸しを効果的に行う方法

業務の棚卸しは、一度に完璧を目指す必要はありません。段階的かつ計画的に進めることで、実効性と継続性のある改革が可能になります。ここでは、効果的に棚卸しを行うための4つのステップを紹介します。

目的を明確にする

最初に必要なのは、業務棚卸しを行う明確な目的の設定です。
目的が曖昧なままでは、情報収集が場当たり的になり、実際の業務改善に結びつかなくなります。例えば「残業削減のため」「属人化の解消を図るため」「業務プロセスを標準化するため」など、解決したい課題を言語化しておくことで、関係者の認識が揃い、棚卸しの質が高まります。

また、目的は関係者全員に共有することが大切です。背景や意義を理解してもらうことで、担当者の協力を得やすくなり、形だけの業務見直しに陥るリスクを減らせます。

業務を「見える化」する

目的が定まったら、次に行うのが業務の可視化です。
これは、各担当者が実際にどのような作業を、どのくらいの頻度で、どれだけの時間をかけて行っているかを具体的に洗い出すプロセスです。ヒアリング、日報、RPAツールのログなど、複数の情報源を活用すると、実態との乖離を防げます。

また、「見える化」では業務内容だけでなく、その作業に使われているツールや関係部署とのやり取りも記録することで、業務の流れや依存関係が明確になります。
これにより、業務改善の対象となるポイントがより立体的に浮かび上がってきます。

業務を分類・分析する

見える化によって把握した業務内容は、そのままでは判断材料として不十分です。そこで必要になるのが、業務の分類と分析です。

分類は「定型業務」「非定型業務」「判断を伴う業務」など、性質ごとに分けて行います。また、コア業務とノンコア業務の切り分けも重要です。
例えば、受発注処理や経費精算などは標準化しやすく、外部委託や自動化の対象になります。

分析では、各業務にかかる工数や発生頻度、属人性の高さを評価します。これにより、効率化の余地が大きい業務を見極めることができ、リソースの再配分や再設計の方針が立てやすくなります。

業務を再設計する

最後に行うのが、分析結果をもとにした業務プロセスの再設計です。
再設計のポイントは「削減」「統合」「自動化」「標準化」の4つです。
重複する業務はまとめ、不要な承認ステップは簡略化し、手作業に依存する処理は自動化を検討します。

ただし、再設計は単に効率性を高めるだけでなく、「誰が、どこからでも働ける仕組み」への転換を意識する必要があります。
例えば、クラウド型のワークフローを導入すれば、テレワーク環境でも承認作業が円滑に行えるようになります。

また、新しい業務フローは導入前にテストを実施し、現場のフィードバックを反映させながら最適化することが欠かせません。再設計した仕組みを社内に定着させるには、教育やマニュアル整備も併せて行うと効果的です。

業務の棚卸しをする3つのメリット

業務の棚卸しは、単なる作業の整理ではありません。組織の運営効率や人材活用に影響を及ぼす取り組みです。

ここでは、棚卸しによって得られる主なメリットを3つに分けて紹介します。

①ムダな業務や非効率が見える化される

業務の棚卸しを実施すると、日常的に行われている作業のうち、実は目的が不明瞭だったり、過剰に時間をかけすぎていた業務が明らかになります。
例えば、複数の部署で類似のデータ入力を行っていたり、確認プロセスが過剰に設けられているなどの重複や非効率が顕在化します。

このようなムダを可視化することによって、改善の必要性が全社的に共有され、不要な作業の削減や簡素化への動きが生まれます。結果として、業務全体の処理スピードが向上し、社員の負荷も軽減されるでしょう。

さらに、作業量が多い割に付加価値の低い業務を削除または自動化することで、本来注力すべきコア業務へ集中できるようになります。限られた時間やリソースをより効果的に活用するためにも、棚卸しは極めて有効なアプローチです。

②人員配置・リソースの最適化ができる

業務の棚卸しを通じて各部署の業務量や作業内容を把握できると、組織内の人材リソースを適切に再配置するための判断材料が得られます。
例えば、特定のチームだけが過剰な業務量を抱えていたり、逆に比較的余裕のある部署が見つかることもあります。

こうした実態を把握できれば、部署間の業務分担の見直しや、プロジェクトチームの再編成などが可能になります。人材配置のバランスが取れることで、一部の社員に過剰な負担がかかる事態を防ぎ、職場の働きやすさやパフォーマンスの向上にもつながります。

さらに、育成が必要な分野やスキルギャップも明らかになるため、人材開発や採用戦略においても的確な打ち手を講じることが可能です。戦略的な人員活用が実現すれば、組織の持続的成長を支える基盤が整うでしょう。

③属人化の解消と業務継続性の確保につながる

棚卸しによって「誰が、どの業務を、どのように行っているか」が明確になることで、属人化のリスクを抑えることができます。
属人化とは、特定の業務が特定の社員に依存してしまい、他の社員が対応できなくなる状態を指します。この状態は、担当者が退職や長期休職をした際に、業務の停滞や品質低下を招く原因になります。

業務の棚卸しを通じて、そうした属人化されている業務を特定し、マニュアル化や業務の共有体制づくりを進めることが重要です。
例えば、定期的な引き継ぎ会議やローテーション制度を導入することで、複数人が同じ業務を担えるようにし、業務のブラックボックス化を防ぐことができます。

また、業務フローが文書化されていると、緊急時の対応だけでなく、新人教育や業務の外部委託を行う際にもスムーズに引き継ぎが進みます。こうした対応力の高さは、事業継続性を高めるだけでなく、組織全体の安定性や信頼性の向上にも寄与するでしょう。

業務の棚卸しをして効率化を実現した企業事例

実際に業務の棚卸しを通じて、組織改革や業務効率化を実現した企業の事例を紹介します。それぞれの企業がどのような課題を持ち、どのように棚卸しを行い、成果を得たのかを知ることで、自社での施策を検討する際の参考になるでしょう。

事例①株式会社みずほフィナンシャルグループ|手書き・非定型帳票の事務処理業務を棚卸ししてRPAを導入

みずほフィナンシャルグループでは、長年にわたり手作業で行われてきた帳票の処理業務に多くの工数がかかっていました。特に、手書きや非定型形式の帳票については自動化が難しく、ミスの発生や作業の属人化も課題となっていました。

そこで同社は、帳票処理を含む事務処理業務の棚卸しを実施し、全体像を「見える化」したうえで、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入を決定しました。業務棚卸しの過程では、どの業務が自動化に適しているか、逆に人手での判断が不可欠な業務はどこかを分類し、優先度を明確にしました。

結果として、手書き帳票の処理時間が短縮されただけでなく、入力ミスの削減や人的リソースの再配置にもつながっています。この事例は、従来は自動化が難しいとされていた業務にも、丁寧な棚卸しとテクノロジーの組み合わせにより解決策があることを示しています。

参考:株式会社みずほフィナンシャルグループ

事例②株式会社三井住友銀行|約600万時間を削減する自動化システムの導入

三井住友銀行では、業務時間の削減と質の向上を両立させるために、全社的な業務の棚卸しを行いました。目的は明確で、年間で約600万時間という大規模な作業時間の削減です。

業務の棚卸しにおいては全行的に業務フローを再点検し、重複業務や非効率な承認プロセス、手作業による集計業務などを徹底的に洗い出しました。次に、それぞれの業務を「省略」「簡素化」「自動化」の3軸で再設計し、RPAやAI-OCR、ワークフローシステムなどのデジタルツールを段階的に導入しました。

特に注目すべきは、現場の意見を吸い上げながら施策を進めた点です。現場主導の改善活動が全体の定着を促し、短期間で効果を上げることに成功しています。業務の棚卸しが経営戦略と連動し、働き方改革の土台となった好例といえるでしょう。

参考:株式会社三井住友銀行

事例③ヤマト運輸株式会社|業務負荷の多かった配車・人員予測にAIを活用

ヤマト運輸では、物流業務における配車計画や人員配置に大きな負担がかかっていました。これらの業務はこれまで経験に基づく属人的な判断に依存していたため、計画の精度や作業の平準化に課題を抱えていました。

同社はこの状況を改善するために、まず現場レベルでの業務の棚卸しを実施したのです。どのようなタイミングで、どの部署が、どれだけの作業負荷を抱えているかを数値化し、可視化する取り組みを行いました。業務の流れが明らかになったことで、AIを活用した配車予測システムと人員シミュレーションの導入を決定したのです。

AIの導入後は、荷物の到着状況に応じた最適な人員配置や車両の効率的な稼働が可能になり、業務負荷の軽減につながりました。また、棚卸しによって見えた業務量の変動パターンは、繁忙期対策やエリア戦略の設計にも活用されています。棚卸しが戦略的なデータ活用への第一歩となった事例です。

参考:ヤマト運輸株式会社

業務の棚卸しをする方法を知りたい方は『CLOUD BUDDY』へご相談ください

業務の棚卸しは、ただ作業をリストアップするだけでは十分とはいえません。組織全体の目的や課題を見据えた上で、業務を分析・再設計し、継続的な改善につなげる視点が欠かせません。
そうした全体設計と現場との橋渡しをサポートできるのが、業務改善に特化したプロフェッショナルサービスです。

『CLOUD BUDDY』では、業務の見える化から改善プロジェクトの設計、ITツールの選定・導入支援までを一貫して提供しています。現場の業務フローに合った最適なソリューションを提案し、実行可能な改善策を共に検討するパートナーとして企業の変革を支援しています。

自社に合った業務棚卸しの進め方を知りたい方や、ツール選定に悩んでいる方は、ぜひ『CLOUD BUDDY』にご相談ください。外部の視点を加えることで、新たな発見や効率化のヒントが得られるかもしれません。

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まとめ|業務の棚卸しをして「無駄」を削減しよう

業務の棚卸しは、単なる作業整理ではなく、組織全体の生産性を引き上げるための重要な取り組みです。ムダや非効率の可視化により最適なリソース配分や業務継続性の確保、さらには属人化の解消といった多くの効果が期待できます。

さらに企業事例に見るように、棚卸しはDX(デジタルトランスフォーメーション)や働き方改革といった経営課題にも直結しています。現状把握から始まり、再設計を経て最適な業務構築へとつなげるプロセスは、すべての企業にとって必要不可欠な取り組みといえるでしょう。

業務効率化を進めたいが、何から着手すべきか悩んでいる場合は、外部の支援を活用するのも有効な手段です。『CLOUD BUDDY』のような支援パートナーと連携しながら、計画的に棚卸しを進めることで、持続的な組織改善につながります。

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