バックオフィス業務では、特定の担当者だけが業務の詳細を把握しているという属人化の状態に陥りやすい傾向があります。経理や総務、人事といった部門では、専門性の高い業務や複雑な手続きが多く、いつの間にか一部のメンバーに業務が集中してしまうケースも少なくありません。こうした属人化は、担当者の不在時に業務が停滞したり、ミスやトラブルを招いたりする原因となります。
この記事では、バックオフィスの属人化がもたらす具体的なトラブルを明らかにした上で、属人化を解消するために必要な取り組みを解説していきます。さらに、ナレッジ共有に役立つ便利なツールも紹介しますので、組織全体で業務をスムーズに回せる仕組み作りを目指す方はぜひ参考にしてください。
バックオフィスの属人化で起こるトラブル
業務が特定の担当者に依存している状態は、一見すると効率的に見えるかもしれません。しかし実際には、様々なリスクを抱えた危険な状態といえます。
ここでは、属人化によって引き起こされる代表的なトラブルを3つ見ていきましょう。これらの問題を理解すれば、属人化解消の重要性がより明確になります。
業務が止まる・遅延する
属人化が進んだ業務では、担当者が休暇や病欠で不在になった際に、誰も代わりに対応できない状況が発生します。例えば、月次決算の処理手順を一人しか把握していなければ、その担当者が急な体調不良で休んだ場合、決算業務全体が止まってしまうでしょう。取引先への支払いや給与計算といった期限のある業務が遅延すれば、企業の信用問題にも発展しかねません。
また、担当者が退職する際には、引き継ぎに多くの時間がかかります。業務手順が明文化されていなければ、後任者は試行錯誤しながら業務を覚えなければならず、習得までに数ヶ月を要する場合もあるでしょう。その間、業務の質が低下したり、ミスが頻発したりするリスクも高まります。
さらに、担当者が異動や昇進で別の部署に移る場合も同様の問題が起こります。組織の人事異動が円滑に進まなくなれば、キャリア開発の機会も制限されてしまうでしょう。業務が特定の個人に紐づいている状態は、組織全体の柔軟性を損ない、事業継続性にも悪影響を及ぼします。
情報共有の不備でミスやクレームが発生する
属人化された業務では、重要な情報が担当者の頭の中だけにあり、他のメンバーと共有されていない状況が生まれます。例えば、特定の取引先との契約内容や過去のトラブル対応の経緯などが共有されていなければ、別の担当者が対応した際に不適切な対応をしてしまう恐れがあるでしょう。
顧客情報の管理が属人化していると、問い合わせに対して異なる回答をしてしまい、クレームにつながる場合もあります。また、業務の進捗状況や課題が共有されていなければ、チーム内での連携も取れません。ある業務が遅れていても、他のメンバーが気づかずにサポートできないといった事態も起こります。
情報の偏在は、組織内でのコミュニケーション不足を招き、チームワークの低下にもつながるでしょう。さらに、担当者が独自の判断で業務を進めてしまうと、組織としての方針と異なる対応をしてしまうリスクもあります。情報共有の不備は、単なる業務効率の問題だけでなく、顧客満足度や企業の評判にも影響を与える深刻な課題です。
コンプライアンスリスクが増える
属人化が進むと、業務プロセスの透明性が失われ、コンプライアンス上のリスクが高まります。特定の担当者だけが処理を行っている業務では、第三者によるチェックが機能せず、不正や誤りが見逃されやすくなるでしょう。
例えば、経費精算の承認プロセスが形骸化していると、不適切な支出が通ってしまう可能性があります。また、個人情報の取り扱いについても、担当者が独自のルールで管理していれば、漏えいのリスクが高まります。法令や社内規程に沿った運用がなされているかを確認する仕組みがなければ、知らず知らずのうちにコンプライアンス違反を犯してしまう恐れもあるでしょう。
監査対応の際にも、業務プロセスが明文化されていなければ、適切な説明ができません。内部統制の観点からも、業務が特定の個人に依存している状態は望ましくありません。さらに、担当者が不正を働いた場合、発覚が遅れるリスクもあります。属人化の解消は、単なる業務効率化の問題ではなく、企業のガバナンス強化にも直結する重要な取り組みなのです。
バックオフィスの属人化の解消に必要なこと
属人化を解消するには、組織的かつ計画的なアプローチが求められます。一朝一夕には実現できませんが、着実に取り組めば確実に改善できるでしょう。
ここでは、属人化解消に向けて必要な3つの取り組みを解説していきます。これらを段階的に進めることで、誰もが業務を担える体制を構築できます。
業務内容を「可視化」する
属人化を解消する第一歩は、現在どのような業務があり、誰がどのように処理しているのかを明らかにすることです。まず、部門内のすべての業務を洗い出し、一覧表にまとめましょう。業務名、担当者、処理頻度、所要時間、難易度などを記録していきます。
この作業を通じて、特定の担当者に業務が集中している状況や、他のメンバーが全く関与していない業務が浮き彫りになるでしょう。次に、各業務のフローを図式化します。誰がどのタイミングで何を行い、どこで承認を得るのかといったプロセスを可視化すれば、業務の全体像が把握しやすくなります。
フロー図を作成する過程で、無駄な工程や非効率な手順も発見できるかもしれません。また、業務の依存関係も明確になり、どの業務が他の業務に影響を与えるのかも理解できるでしょう。可視化された情報は、チーム全体で共有し、誰もが閲覧できる場所に保管します。定期的に見直しを行い、業務内容に変更があれば随時更新していきましょう。可視化は属人化解消の土台となる重要なステップです。
マニュアル化・標準化を徹底する
業務内容が可視化できたら、次は各業務の手順を詳細にマニュアル化していきます。マニュアルには、業務の目的や背景、具体的な手順、使用するツールやシステム、注意点、トラブル時の対処法などを記載しましょう。
画面のスクリーンショットやフロー図を入れると、より理解しやすくなります。マニュアルを作成する際には、初めてその業務に触れる人でも理解できる内容を心がけてください。専門用語には説明を加え、前提知識がなくても読み進められるよう配慮します。
また、業務の手順を標準化することも重要です。担当者によって処理方法が異なっていると、結果にばらつきが生じたり、引き継ぎが困難になったりします。チーム内で話し合い、最も効率的で正確な方法を標準手順として定めましょう。
標準化によって、誰が対応しても同じ品質を保てるようになります。マニュアルは一度作成して終わりではなく、業務の変更や改善があれば随時更新していきます。常に最新の状態を保つことで、実用的なマニュアルとして機能し続けるでしょう。
ナレッジを共有して社内での知識格差をなくす
マニュアルだけでは伝えきれない暗黙知やノウハウも、積極的に共有していく必要があります。例えば、特定の取引先への対応のコツや、トラブル時の解決方法、効率的な作業の進め方など、経験を通じて得られた知識は非常に価値があるものです。こうした情報を個人の中に留めておくのではなく、チーム全体で共有できる仕組みを作りましょう。
ナレッジ共有ツールを導入すれば、気づいたことや学んだことを手軽に記録し、他のメンバーと共有できます。質問と回答をデータベース化すれば、同じ疑問を持った人が検索して答えを見つけられるでしょう。また、定期的に勉強会や情報共有会を開催するのも効果的です。担当者が自分の業務について説明したり、最近対応した難しいケースを共有したりすることで、知識の伝達が進みます。
新人や異動してきたメンバーには、ベテラン社員がメンターとして付き、OJTを通じて知識を伝えていく方法もあるでしょう。知識格差を解消する取り組みは、組織全体のスキルアップにもつながり、チームの対応力を底上げします。
ナレッジ共有でバックオフィスの属人化を解消する便利なツール例
属人化を解消し、ナレッジを効果的に共有するには、適切なツールの活用が欠かせません。
ここでは、バックオフィス業務のナレッジ共有に役立つ代表的なツールを3つ紹介していきます。それぞれの特徴を理解して、自社に最適なツールを選びましょう。
①Confluence｜リモートワーク環境でも属人化を予防
Confluenceは、チームでのドキュメント作成と情報共有に特化したコラボレーションツールです。このツールの特徴は、ページ単位で情報を整理し、階層構造で管理できる点にあります。業務マニュアルやプロジェクト資料、議事録など、様々な情報を体系的に保管できるため、必要な情報を素早く見つけられるでしょう。
テンプレート機能も充実しており、議事録や業務手順書などを統一されたフォーマットで作成できます。複数のメンバーが同時に編集できるリアルタイム共同編集機能により、離れた場所にいてもスムーズに協力して文書を作成できます。コメント機能を使えば、ページ上で質問やフィードバックを交わせるため、コミュニケーションも活発になるでしょう。
また、変更履歴が自動的に保存されるため、過去のバージョンに戻すことも容易です。Jiraなど他のアトラシアン製品との連携も強力で、プロジェクト管理と情報共有を一体的に進められます。リモートワーク環境でも情報の透明性を保ちながら、属人化を防ぎたい組織に適したツールです。
出典参照：リモートに最適なチームのワークスペース｜アトラシアン株式会社
②Notion｜知識を手軽に共有できるAIワークスペース
Notionは、ドキュメント作成、データベース、タスク管理などを統合した柔軟性の高いワークスペースツールです。このツールの魅力は、ブロック単位でコンテンツを構築できる自由度の高さにあります。テキスト、画像、表、リスト、埋め込みコンテンツなどを組み合わせて、見やすく分かりやすいページを作成できるでしょう。
データベース機能を使えば、業務リストや顧客情報、プロジェクト管理などを一元的に管理できます。ビュー機能により、同じデータをテーブル形式、カレンダー形式、ボード形式など、用途に応じて表示方法を切り替えられる点も便利です。AI機能も搭載されており、文章の要約や翻訳、アイデアの整理などをサポートしてくれます。
テンプレートギャラリーには、様々な業務に対応したテンプレートが用意されているため、すぐに使い始められるでしょう。権限設定も柔軟で、ページごとに閲覧や編集の権限を細かく設定できます。直感的な操作性と多機能性を兼ね備えたNotionは、ナレッジ共有の基盤として幅広い業務に活用できるツールです。
出典参照：Notion (ノーション) – あなたのニーズを叶えるAIワークスペース。｜Notion Labs Japan 合同会社
③Qast｜個人の知識や経験を蓄積する属人化解消ツール
Qastは、社内のナレッジを蓄積・共有することに特化したツールです。このツールの最大の特徴は、Q&A形式で情報を蓄積できる点にあります。社内で発生した質問と回答をデータベース化することで、同じ疑問を持った人が検索して答えを見つけられる仕組みを作れます。質問者は気軽に疑問を投稿でき、知識を持つメンバーが回答することで、組織全体の知識が共有されていくでしょう。
また、メモ機能を使えば、業務の中で気づいたことやノウハウを手軽に記録できます。他のメンバーがその情報を見つけて活用すれば、暗黙知の共有が進みます。タグ機能により、情報を分類して整理できるため、必要な情報を効率的に探せるでしょう。検索機能も充実しており、キーワードやタグから関連する情報をすぐに見つけられます。
投稿へのいいね機能やコメント機能もあり、有益な情報が評価される文化が育まれます。スマートフォンアプリにも対応しているため、外出先でも情報にアクセスできて便利です。属人化を解消し、組織の知識資産を効果的に蓄積したい企業に最適なツールといえます。
出典参照：ナレッジの資産化が、企業の未来をつくり出す｜any株式会社
バックオフィスにおける属人化の解消は『CLOUD BUDDY』へご相談ください
バックオフィスの属人化を解消するには、業務の可視化からマニュアル化、ナレッジ共有ツールの導入まで、総合的なアプローチが必要です。しかし、どこから手をつけるべきか、どのツールが自社に適しているのか判断に迷われる企業も多いでしょう。
『CLOUD BUDDY』は、クラウドサービスの導入支援を支援するパートナー企業として、属人化解消のための最適なソリューションをご提案します。お客様の業務内容や課題を丁寧にヒアリングした上で、最適なツールの選定から導入、運用支援まで一貫してサポートしています。導入後も継続的にフォローを行い、ツールを最大限に活用できる環境を整えられるでしょう。
バックオフィスの属人化解消や業務効率化をお考えの際は、ぜひ『CLOUD BUDDY』へご相談ください。
まとめ｜業務の見える化でバックオフィスの属人化を解消しよう
バックオフィスの属人化は、業務停滞やミス発生、コンプライアンスリスクなど、様々なトラブルを引き起こします。こうした問題を解決するには、業務の可視化から始め、マニュアル化と標準化を徹底し、ナレッジを組織全体で共有する取り組みが欠かせません。
適切なツールを活用すれば、情報共有がスムーズになり、誰もが業務を担える体制を構築できるでしょう。属人化の解消は、組織の柔軟性を高め、事業継続性を強化する重要な取り組みです。業務の見える化から着実に進めて、持続可能なバックオフィス体制を作っていきましょう。
