経理担当者の突然の退職は、企業経営に深刻な影響を及ぼす可能性があり、多くの経営者が不安を抱えているのではないでしょうか。長年経理業務を一手に担ってきた社員が辞めてしまうと、日々の支払い業務から決算処理まで、すべての業務が停滞してしまうリスクがあります。特に中小企業では経理業務が属人化しやすく、担当者の退職により業務が立ち行かなくなるケースも珍しくありません。
この記事では、経理担当者が退職することで生じるリスクから属人化防止と体制強化のポイント、さらには退職リスクの可視化や離職予防に役立つツール例まで詳しく解説していきますので、経理部門の体制強化を検討する際の参考にしてください。
目次
Toggle経理担当者が退職することで生じるリスク
経理担当者の退職は、企業運営に様々なリスクをもたらします。特に経理業務が特定の担当者に集中している場合、その影響は深刻なものになりかねません。
ここからは、経理担当者が退職することで具体的にどのようなリスクが生じるのか、3つの重要なポイントについて詳しく見ていきましょう。これらのリスクを理解することで、事前の対策の必要性が明確になります。それぞれのリスクがどのような事態を引き起こすのか、具体的な影響とともに解説していきますので、自社の経理体制を見直す際の参考にしてください。
資金繰り・支払い業務の停滞
経理担当者が退職すると、資金繰り管理や支払い業務が滞り、取引先との関係悪化や信用低下につながるリスクがあります。支払期日の管理や振込手続きは経理担当者が把握していることが多く、退職により誰にいつ支払うべきか分からなくなってしまうケースも見られるでしょう。
取引先への支払いが遅れると、督促の連絡が来るだけでなく、今後の取引に影響が出る可能性もあります。給与の支払いに関する業務も停滞すれば、従業員の生活に直接影響し、社内の信頼も損なわれてしまいます。
資金繰り表の作成や更新も担当者任せになっていると、現在の資金状況や今後の資金需要が見えなくなり、経営判断に支障をきたすでしょう。銀行借入の返済スケジュールや手形の決済日なども、担当者の記憶や個人的なメモに頼っている場合、重要な支払いを見落とすリスクが高まります。
経理データのブラックボックス化
経理担当者が退職すると、過去の取引データや処理方法がブラックボックス化し、業務の継続が困難になるリスクがあります。仕訳のルールや勘定科目の使い分けが明文化されておらず、退職した担当者の判断基準が分からないため、後任者が同じ品質で処理を続けられなくなってしまうでしょう。
過去の決算資料や税務書類がどこに保管されているか分からず、税務調査や監査の際に必要な書類を探すのに時間がかかるケースも起こります。取引先ごとの契約条件や支払条件も、担当者の記憶に頼っている部分があると、適切な処理ができなくなる恐れがあるでしょう。
会計システムのパスワードや操作方法も共有されていないと、後任者がシステムにアクセスできず、業務が完全に止まってしまう事態も考えられます。経理データの所在や処理のルールが可視化されていないと、引き継ぎに膨大な時間がかかり、業務再開までに数ヶ月を要することもあります。
決算・申告業務の遅延
経理担当者の退職は、決算業務や税務申告の遅延を引き起こし、法的なペナルティや信用問題につながるリスクがあります。決算作業は年に一度または四半期ごとに発生する重要な業務であり、期限内に完了させなければなりません。
後任者が決算手順を理解していないと、試算表の作成や勘定科目の残高確認、決算整理仕訳の入力といった一連の作業が滞ってしまうでしょう。税務申告も法定期限があり、遅れると延滞税や加算税といったペナルティが課される可能性があります。
決算数値が確定しないと、金融機関への報告や株主への説明も遅れ、企業の信頼性に悪影響を及ぼすでしょう。監査法人との調整や税理士とのやり取りも、前任者が担当していた場合、引き継ぎが不十分だとコミュニケーションに支障が出ます。決算業務の遅延は経営判断の遅れにもつながり、事業計画の策定や投資判断のタイミングを逃してしまうリスクも出てくるでしょう。
経理担当者を退職させない!属人化防止と体制強化のポイント
経理担当者の退職リスクを軽減し、安定した経理体制を構築するためには、属人化を防ぎながら組織として体制を強化することが重要になります。
ここからは、実際に効果が期待できる3つのポイントについて詳しく解説していきましょう。これらのポイントを実践することで、特定の担当者に依存しない経理体制を構築でき、退職による影響を最小限に抑えられます。それぞれのポイントが相互に関連し合い、総合的な体制強化につながっていきますので、順番に見ていきましょう。
業務の分担・チーム化を進める
経理業務を複数の担当者で分担し、チームとして機能させることで、属人化を防ぎ退職リスクを軽減できます。一人の担当者がすべての経理業務を担当するのではなく、売掛金管理、買掛金管理、給与計算、決算業務といったように役割を分けることで、業務の透明性が高まるでしょう。
業務を分担する際は、メイン担当とサブ担当を設定し、お互いの業務内容を理解しておくことで、休暇や退職の際にもスムーズに引き継げます。定期的にローテーションを実施し、複数の業務を経験させることで、チーム全体のスキルアップにもつながります。
業務の進捗状況や課題を共有するミーティングを定期的に開催し、チーム内でのコミュニケーションを活性化させることも重要です。チーム化により業務の相互チェック機能も働き、ミスの早期発見や不正の防止にも効果を発揮するでしょう。
コミュニケーションと評価制度を整える
経理担当者の退職を防ぐには、働きやすい環境を整え、適切に評価する仕組みを構築することが不可欠になります。経理担当者は裏方の業務が多く、成果が見えにくいため、評価されにくいと感じて不満を抱えているケースも少なくありません。
定期的な面談を実施し、業務の悩みやキャリアの希望を聞き取ることで、退職の兆候を早期に把握できるでしょう。評価制度では、正確性やスピードといった定量的な指標だけでなく、業務改善への貢献や後輩の育成といった定性的な要素も評価項目に含めることが重要です。
経理担当者のスキルアップを支援するため、簿記や税務に関する資格取得の支援制度を設けることも効果的でしょう。労働時間や業務負荷にも配慮し、繁忙期と閑散期でメリハリのある働き方ができる環境を整えることで、長く働き続けられる職場を実現できます。
自動化ツールの導入で作業負担を軽減する
経理担当者の業務負担を軽減するために、クラウド会計システムやRPAといった自動化ツールを導入することで、退職リスクを下げられます。データ入力や仕訳作業といった定型的な業務を自動化することで、担当者はより付加価値の高い業務に集中できるようになるでしょう。
銀行口座やクレジットカードとの連携により、取引データを自動取得して仕訳候補を作成する機能を活用すれば、手入力の時間を削減できます。経費精算システムを導入し、従業員がスマートフォンで申請できるようにすることで、経理担当者の承認や入力作業の負担も軽減されます。
請求書の発行や入金消込といった業務も自動化できるため、月末月初の繁忙期の負担を分散できるでしょう。自動化により業務がシステム上で標準化されるため、属人化の防止にもつながり、引き継ぎもスムーズに行えるようになります。
退職リスクの可視化・離職予防に役立つツール例
経理担当者の退職リスクを早期に発見し、離職を予防するためには、従業員のエンゲージメントや満足度を定期的に測定することが有効な手段となります。
ここからは、実際に多くの企業で活用され、退職リスクの可視化や離職予防に貢献しているツールを3つ紹介していきましょう。各ツールの特徴や機能を理解することで、自社に適したツール選定の参考になります。導入を検討する際は、経理部門だけでなく全社的な活用も視野に入れるとよいでしょう。それでは具体的なツールを見ていきます。
①モチベーションクラウド|エンゲージメントサーベイによる退職リスクの早期発見
モチベーションクラウドは、従業員のエンゲージメントを可視化し、組織の状態を定量的に把握できるツールとして多くの企業に導入されています。定期的なサーベイを通じて、従業員の仕事への満足度やモチベーション、組織への帰属意識などを測定し、退職リスクの高い従業員を早期に発見できます。
経理担当者がどの程度エンゲージメントを持って働いているか数値で把握できるため、退職の予兆を察知して対策を講じられるでしょう。サーベイ結果は部門別や職種別に分析でき、経理部門特有の課題も明らかになります。エンゲージメントスコアの推移を時系列で追跡することで、業務負荷の増加や職場環境の変化による影響も把握できます。
改善施策の効果測定もできるため、実施した対策が実際にエンゲージメント向上につながっているか検証できるでしょう。他社との比較データも提供されており、自社の経理部門のエンゲージメントが業界内でどの水準にあるか客観的に評価できます。
出典参照:モチベーションクラウド|株式会社リンクアンドモチベーション
②HRBrain|経理業務の目標管理と退職リスクの把握に役立つ
HRBrainは、人事評価や目標管理を一元化できるクラウドシステムであり、経理担当者の目標達成状況や成長を可視化しながら退職リスクを把握できます。目標設定から進捗管理、評価のプロセスをシステム上で管理できるため、経理担当者が設定した目標に対してどの程度達成しているか、上司と本人の双方が常に確認できます。
定期的な1on1ミーティングの記録もシステムに残せるため、面談で話された内容や懸念事項を蓄積し、退職の兆候を見逃さないようにできるでしょう。従業員の満足度やモチベーションに関するアンケート機能も備えており、定期的に実施することで経理担当者の心理状態の変化を把握できます。
人材情報を一元管理できるため、経理担当者のスキルや経験、保有資格なども記録でき、適切な育成計画の立案にも活用できるでしょう。データに基づいた人事施策を実行できるため、勘や経験だけに頼らない科学的なマネジメントが実現します。
③Wevox|スマホでできる簡易サーベイで従業員の不満を可視化
Wevoxは、スマートフォンで手軽に回答できる従業員サーベイツールとして、継続的なエンゲージメント測定に適しています。月に一度程度の頻度で簡単なアンケートを実施し、従業員の心理状態や職場環境に対する満足度を定期的にモニタリングできます。
回答時間は数分程度で済むため、忙しい経理担当者にも負担をかけずに継続的なデータ収集が可能になるでしょう。9つのエンゲージメント指標で従業員の状態を分析し、どの領域にリスクがあるか一目で把握できます。経理担当者が抱えている不満や悩みを早期に発見できるため、退職を考え始める前に対策を打てます。
匿名での回答も選択でき、本音を引き出しやすい設計になっているため、表面的な回答ではなく実態を把握できるでしょう。経理部門のエンゲージメントスコアが低下した場合、アラート機能で通知されるため、迅速な対応が取れます。シンプルな操作性と継続しやすい設計により、長期的な従業員の状態把握に貢献するツールといえます。
出典参照:Wevox|株式会社アトラエ
経理担当者の退職リスク対策は『CLOUD BUDDY』へご相談ください
経理担当者の退職リスクを軽減し、安定した経理体制を構築したいものの、具体的にどのような施策を講じればよいか分からない、ツールの選定や導入に不安があるといった悩みをお持ちではないでしょうか。
『CLOUD BUDDY』では、経理部門の体制強化と離職予防を総合的に支援しています。現状の経理体制の診断から属人化の解消、業務の標準化、適切なツールの選定と導入支援、運用定着まで一貫してサポートできるため、確実に効果を出せる改善を実現します。豊富な支援実績に基づいた実践的なアドバイスを提供し、御社の状況に最適なソリューションをご提案いたします。まずはお気軽にご相談ください。
まとめ|属人化防止と体制強化で経理担当者の退職を防ごう
経理担当者の退職は、資金繰りや支払い業務の停滞、経理データのブラックボックス化、決算や申告業務の遅延といった深刻なリスクをもたらします。これらのリスクを軽減するには、業務の分担やチーム化、コミュニケーションと評価制度の整備、自動化ツールの導入による負担軽減が効果的なポイントとなるでしょう。
モチベーションクラウドやHRBrain、Wevoxといったツールを活用することで、退職リスクの早期発見と離職予防が実現できます。経理担当者が安心して長く働ける環境を整えることは、企業の安定的な経営基盤の構築につながります。自社の経理体制を見直し、適切な施策を実施していきましょう。






