企業を取り巻く環境が急速に変化する中で、経理業務のデジタル化は避けて通れない課題になっています。紙の伝票や手作業での入力、承認のための押印といったアナログな業務プロセスが残る企業では、業務効率の低下やミスの発生、そして経営判断の遅れといった問題が顕在化しているケースも少なくありません。人手不足が深刻化し、テレワークが普及する現在、従来のやり方では経理部門の生産性を維持することが難しくなっているのが現状です。
本記事では、なぜ経理のデジタル化が求められているのか、そして実際にデジタル化を進める際の具体的な手順を詳しく解説していきます。
目次
Toggleなぜ経理のデジタル化が求められているのか
経理のデジタル化が注目される背景には、企業を取り巻く複数の社会的要因があります。少子高齢化による人手不足が深刻化する中で、限られた人員で増加する業務をこなす必要性が高まっているのが現状です。
ここでは、経理デジタル化が求められる背景を4つの視点から詳しく解説していきます。これらの要因を理解することで、自社にとってデジタル化がなぜ必要なのかが明確になるはずです。
人手不足と経理業務の増加
少子高齢化が進む日本では、あらゆる業界で人手不足が深刻化しており、経理部門も例外ではありません。特に中小企業では、経理担当者を新たに採用することが困難になっており、少人数で多くの業務をこなさざるを得ない状況が続いています。
一方で、経理業務そのものは増加傾向にあるのが現状です。電子帳簿保存法やインボイス制度といった新たな制度への対応、取引先や従業員数の増加に伴う処理件数の増加など、経理部門の負担は年々増しているでしょう。
こうした状況下で、従来のような手作業中心の業務プロセスを続けていると、残業時間の増加や担当者の疲弊につながります。デジタル化によって定型業務を自動化し、人手に頼らずに処理できる仕組みを構築することで、限られた人員でも効率的に業務を回せるようになります。経理のデジタル化は、人手不足という構造的な課題に対する有効な解決策といえるでしょう。
テレワーク・働き方改革と経理の制約
新型コロナウイルスの影響で急速に普及したテレワークは、多くの企業で定着しつつあります。しかし、経理部門は紙の書類や押印、現金の取り扱いといったアナログな業務が残っているため、テレワークの導入が遅れているケースも少なくありません。
請求書や領収書を紙で受け取る必要があったり、経費精算の承認に押印が必要だったりすると、経理担当者は出社せざるを得ない状況になります。こうした制約は、働き方改革の推進を妨げる要因にもなっているでしょう。経理業務をデジタル化することで、書類の電子化や電子承認が可能になり、場所にとらわれない働き方が実現できます。
例えば、クラウド会計ソフトを導入すれば、自宅からでも経理処理や財務状況の確認ができるようになるでしょう。また、ワークフローシステムを活用すれば、承認作業もオンラインで完結できます。テレワークと経理業務の両立を実現するには、デジタル化が不可欠になります。
属人化・ミス・スピード遅れのリスク
従来のアナログな経理業務には、属人化、ヒューマンエラー、処理スピードの遅さといった構造的な課題があります。属人化とは、特定の担当者しか業務の進め方を知らない状態を指し、担当者が休んだり退職したりすると業務が滞るリスクがあるでしょう。手作業での入力や計算が中心の業務では、どうしてもミスが発生しやすく、後からの修正に時間がかかります。
また、紙の書類を使った承認フローでは、担当者が不在だと承認が進まず、支払いや決算が遅れる原因にもなります。こうした課題をデジタル化によって解決できます。会計ソフトやRPAツールを活用すれば、データ入力や計算を自動化でき、ミスのリスクを大幅に削減できるでしょう。
また、業務プロセスをシステム化することで、マニュアルが不要になり、誰でも同じ品質で業務を遂行できるようになります。さらに、電子承認を導入すれば、承認のスピードが向上し、経理処理全体の効率が高まります。
データ活用による経営判断を速めたいというニーズ
経営環境が急速に変化する現在、経営判断のスピードが企業の競争力を左右する重要な要素になっています。しかし、アナログな経理業務では、月次決算に時間がかかり、経営陣が財務状況を把握できるのが翌月の中旬以降になるケースも少なくありません。
こうした遅れは、迅速な経営判断を妨げる要因になるでしょう。経理業務をデジタル化すれば、リアルタイムで財務データを把握できるようになり、経営判断のスピードが向上します。クラウド会計ソフトを活用すれば、売上や経費の状況を日次で確認でき、必要に応じて即座に対策を講じられるでしょう。
データドリブンな経営を実現するためにも、経理のデジタル化は重要な基盤になります。
経理デジタル化の具体的な手順
経理のデジタル化を成功させるには、計画的に段階を踏んで進めることが重要になります。いきなり全ての業務をデジタル化しようとすると、現場の混乱を招いたり、コストが膨らんだりするリスクがあるでしょう。適切な手順を踏むことで、効果的かつ無理のないデジタル化が実現できます。
ここでは、経理デジタル化を進める際の7つのステップを詳しく解説していきます。自社の状況に合わせて、これらの手順を参考にしていきましょう。
ステップ1:現状業務の可視化と課題整理
経理デジタル化の第一歩は、現状の業務プロセスを可視化し、課題を整理することです。日常的に行っている業務を全て洗い出し、どのような手順で処理しているか、どれくらいの時間がかかっているか、誰が担当しているかを明確にしましょう。
業務フロー図を作成することで、全体像が把握しやすくなります。また、現場の経理担当者からヒアリングを行い、どの業務に負担を感じているか、どこでミスが発生しやすいか、どの作業に時間がかかっているかといった課題を収集することが重要です。
さらに、紙の書類がどこで発生しているか、手作業での入力がどれだけあるか、承認プロセスがどうなっているかといった、アナログな要素を特定しましょう。こうした可視化と課題整理を行うことで、デジタル化すべき領域が明確になります。現状を正確に把握することが、効果的なデジタル化の土台になるでしょう。
ステップ2:デジタル化の目的とKPI設定
現状の課題が明確になったら、次はデジタル化の目的とKPIを設定します。デジタル化の目的は企業によって異なり、業務効率化、コスト削減、ミスの削減、経営判断のスピード向上など、複数の目標が考えられるでしょう。
自社にとって最も重要な目的を明確にすることで、デジタル化の方向性が定まります。また、目的を達成できたかを測るためのKPIも設定する必要があります。例えば、業務効率化が目的であれば、月次決算にかかる日数や、経費精算の処理時間といった指標をKPIとして設定できるでしょう。コスト削減が目的であれば、経理部門の人件費や外部委託費用の削減額をKPIにすることが有効です。
ミスの削減を目指すのであれば、月次でのミス発生件数や修正作業の回数を測定しましょう。KPIを設定することで、デジタル化の効果を定量的に評価でき、継続的な改善につなげられます。目的とKPIを関係者で共有することも重要です。
ステップ3:デジタル化対象業務の優先順位付け
デジタル化の目的とKPIが定まったら、次はどの業務から着手するかの優先順位をつけていきます。全ての業務を一度にデジタル化するのは現実的ではないため、効果の高い業務から段階的に進めることが重要です。優先順位をつける際の基準としては、業務の頻度、かかる時間、ミスの発生頻度、デジタル化の難易度を考慮することが有効でしょう。
例えば、毎日発生する請求書の処理や経費精算といった業務は、頻度が高く時間もかかるため、デジタル化の効果が大きいと考えられます。一方、年に一度しか発生しない決算業務は、優先度を下げても問題ないでしょう。
優先順位を明確にすることで、限られた予算とリソースを効果的に配分でき、早期に成果を出せるようになります。
ステップ4:適切なツール・システムの選定と比較検討
デジタル化する業務の優先順位が決まったら、次は適切なツールやシステムを選定します。市場には多くの会計ソフトやワークフローシステム、RPAツールが存在するため、自社のニーズに合ったものを選ぶことが重要です。
ツール選定の際には、対応業務範囲、既存システムとの連携可否、操作性、サポート体制、料金といった複数の観点から比較検討しましょう。また、無料トライアルやデモンストレーションを活用して、実際の操作感を確認することも大切です。特に、現場の経理担当者が使いやすいと感じるツールを選ぶことで、導入後の定着率が高まります。
さらに、将来的な拡張性も考慮する必要があります。事業が成長して従業員数や取引件数が増えた場合でも対応できるか、他のツールとの連携が可能かといった点を確認しておきましょう。複数のツールを比較検討し、導入実績や口コミも参考にしながら、最適なツールを選定することが成功の鍵になります。
ステップ5:導入計画策定と社内体制構築
ツールの選定が完了したら、具体的な導入計画を策定し、社内体制を構築します。導入計画には、導入スケジュール、予算、担当者、マイルストーン、リスク対策といった要素を盛り込みましょう。特に、現場の業務を止めずにシステムを切り替えるためには、移行期間の設定や並行稼働の計画が重要になります。
また、デジタル化を推進するためのプロジェクトチームを編成することも効果的です。経理部門だけでなく、情報システム部門や経営層も参加することで、組織全体でデジタル化を支援する体制が整うでしょう。導入計画と社内体制をしっかり構築することで、デジタル化を円滑に進められます。
ステップ6:スモールスタートと段階的展開
導入計画が整ったら、いきなり全社展開するのではなく、スモールスタートで始めることが推奨されます。特定の部署や業務に限定して試験的に導入し、問題点や改善点を洗い出してから、段階的に展開していく方法が効果的です。
例えば、まずは経費精算のデジタル化から始めて、うまくいったら請求書処理、次に月次決算といった具合に、順番に範囲を広げていくアプローチが考えられるでしょう。スモールスタートのメリットは、リスクを最小限に抑えながら、実際の運用で得られた知見を次の展開に活かせる点にあります。
また、成功事例を社内で共有することで、デジタル化に対する抵抗感を減らし、他の部門や業務への展開もスムーズに進められます。段階的に展開することで、無理のないデジタル化が実現できます。
ステップ7:効果測定と継続的改善
デジタル化を導入した後は、効果測定と継続的な改善を行うことが重要です。ステップ2で設定したKPIをもとに、デジタル化によってどれだけの効果が得られたかを定期的に測定しましょう。月次決算の日数が短縮されたか、経費精算の処理時間が減ったか、ミスの発生件数が減少したかといった指標を確認します。
また、現場の経理担当者からフィードバックを収集し、使いにくい点や改善してほしい点を把握することも大切です。こうした情報をもとに、業務フローを見直したり、ツールの設定を調整したりすることで、より効率的な運用が可能になるでしょう。
さらに、新たな課題が見つかった場合は、追加のデジタル化を検討することも有効です。デジタル化は一度導入して終わりではなく、継続的に改善を重ねることで、真の効果が発揮されます。PDCAサイクルを回しながら、経理部門全体のレベルアップを図っていきましょう。
経理のデジタル化は『CLOUD BUDDY』へご相談ください
経理のデジタル化を進める際、どこから手をつければよいか分からない、どのツールを選ぶべきか迷うといった悩みを抱える企業は少なくありません。デジタル化を成功させるには、自社の課題を正確に把握し、適切なツールと導入方法を選ぶことが重要です。
『CLOUD BUDDY』では、経理業務のデジタル化を包括的にサポートしています。まずはお気軽にお問い合わせいただき、自社の経理デジタル化に向けた第一歩を一緒に踏み出していきましょう。
まとめ|経理デジタル化のために今すぐ始めよう
経理のデジタル化は、人手不足や働き方改革、業務効率化といった複数の課題を解決する有効な手段になります。ただし、闇雲にツールを導入するのではなく、現状の業務を可視化し、目的とKPIを明確にした上で、段階的に進めることが重要です。
優先順位をつけて効果の高い業務から着手し、スモールスタートで試験的に導入することで、リスクを抑えながら確実な成果を得られるでしょう。導入後も効果測定と継続的な改善を行うことで、デジタル化の効果を最大化できます。
経理のデジタル化は、一朝一夕に完成するものではありませんが、今すぐ始めることで、将来的な競争力の向上につながります。自社の状況に合わせて、できるところから一歩ずつデジタル化を進めていきましょう。






