BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)は、業務の抜本的な改革を通じて、企業の競争力を向上させる手法です。
従来の業務プロセスを根本から見直し、効率化と最適化を図ることで、コスト削減や生産性向上を実現します。
近年、デジタル技術の進化と働き方改革の流れを受け、多くの企業や公共機関でBPRの導入が進んでいます。
本記事では、BPRの基本概念や導入のメリット、成功のポイントについて詳しく解説します。
BPR(業務改革)とは

BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)は、1980年代後半に誕生した業務改革の手法です。
1993年の『リエンジニアリング革命』で世界的に広まり、業務フローや組織構造、情報システムを抜本的に見直し再構築することを意味します。
近年は働き方改革やデジタル化の流れを受け、企業や自治体での導入が加速しています。
BPRの目的
BPRの目的は、業務プロセスを根本から見直し、最適化を図ることです。
業務フローを再設計し、コスト削減や業務効率化を実現します。
部分的な改善ではなく、企業全体の仕組みを抜本的に変えることが重要です。
不要なプロセスや非効率な仕組みを排除し、新たな組織や評価制度を整えます。その結果、企業の競争力を強化し、持続的な成長を目指せるでしょう。
BPRとDXの違い
BPRとDX(デジタルトランスフォーメーション)は、どちらも企業の変革を目的としていますが、焦点や手法が異なります。
BPRは主に業務の流れを最適化するための手法であり、DXはデジタル技術を基盤とした企業全体の変革を意味します。
BPR | DX | |
---|---|---|
目的 | 企業の目標達成と業務プロセスの最適化 | デジタル技術を活用した組織 業務の変革 |
対象範囲 | 企業の活動全体 | 企業全体 |
手法 | BPO、ERP導入、シェアードサービス、アウトソーシングなど | ペーパーレス化、アプリ開発、AI導入など |
BPRで意識すべき4つの要素

BPRを成功させるには「根本的」「抜本的」「劇的」「プロセス」の4つの要素を理解しましょう。
これらは大きな変革を実現するための指針となります。
- 根本的:なぜその業務が存在し、現行の方法で行われているのかを問い直す
- 抜本的:表面的な改善ではなく、不要な業務や古いルールを排除し、ゼロから再構築する
- 劇的:小さな改善ではなく、大幅な業務改革を行い、業績の飛躍を目指す
- プロセス:価値を生み出す業務プロセスを再設計し、効率化と品質向上を図る
BPRに取り組むメリット

BPRを実施すると、業務のムダを削減し、効率的な働き方が実現できます。
DXやデジタル化の基盤が整い、コスト削減や生産性向上にもつながります。
さらに、生産性や顧客満足度の向上など、企業にとってさまざまなメリットが得られるでしょう。
業務のムダを削減し、業務効率化を目指せる
部門ごとに最適化された業務でも、全体で見ると無駄が生じているケースが多くあります。
これが業務の遅延やコスト増加の要因になります。
BPRでは、業務の流れを可視化し、重複業務の統合や不要なプロセスの削減を行うことで、全体の業務効率を向上させます。
企業全体の業務スピードが上がることで、より戦略的な業務に時間を割くことが可能になり、競争力の向上にもつながります。
DXやデジタル化の基盤を整えられる
BPRはDX推進の基盤となる重要な取り組みです。
デジタル技術を導入する前に業務プロセスを最適化することで、効率的なシステム化が可能になり、デジタル化の効果を最大限に引き出すことができます。
これによりテレワークやハイブリッドワークの実現も促進され、企業の柔軟性向上にもつながります。
コスト削減や生産性向上が期待できる
BPRにより、不要な作業が減ることで人件費の削減につながります。
業務の効率化によって作業時間が大幅に減り、ミスも防げます。
さらに業務の流れが整理されると、意思決定もスムーズになり、より重要な業務にリソースを集中できる環境が整います。
その結果、企業全体の生産性向上にもつながります。
顧客満足度の向上につながる
業務が効率化されると、顧客対応のスピードやサービスの品質も向上します。
例えば、問い合わせ対応をAIチャットボットで自動化するとよいでしょう。
自動化することにより、すぐに回答できるため、顧客の満足度が高まります。
また、在庫管理や物流の仕組みを見直せば、納品の遅れを減らし、安定したサービス提供ができます。
対応の質が上がることで、信頼される企業へと成長できます。
BPRのデメリットや注意点

BPRは業務の効率化や生産性向上につながる一方で、デメリットも存在します。
デメリットの一つとして、業務の進め方やシステムの大幅な変更が必要になることが多いです。
また、社内の理解が不足すると、従業員の混乱や抵抗を招くこともあります。
業務の進め方を変更する必要がある
BPRでは、業務の流れを抜本的に見直し、最適なプロセスを構築します。
そのため、従来のやり方に慣れた社員にとっては、大きな変化となります。
新しい業務フローへの適応が求められ、変更に対する抵抗が生じることも少なくありません。
特に、長年続いた業務が突然なくなる場合、現場の混乱を招くことがあります。
変更の負担を減らすためには、事前の説明や段階的な導入が重要です。
システムの再構築が必要になることもある
業務プロセスの変更に伴い、既存のシステムが対応できなくなるケースがあります。
中でも、手作業が多い業務や古いシステムを利用している場合、新しいシステムの導入や既存システムの改修が必要になります。
改修には、大きなコストがかかるうえ、移行期間中の業務負担も増えます。
スムーズに移行するためには、現行システムの課題を把握し、適切な投資計画を立てることが不可欠です。
社内の理解と協力が欠かせない
BPRは従業員の理解と協力が不可欠ですが、変革への不安や一時的な業務負担の増加により、反発を招くことがあります。
これを防ぐためには、目的やメリットを丁寧に説明し、現場の意見を取り入れながら進めることが重要です。
また、明確な目標設定と適切な業務選定による計画的なアプローチが必要で、必要に応じて外部サービスの活用も検討すべきでしょう。
BPRを成功へ導くポイント

BPRは企業の競争力強化や業務効率化に有効ですが、成功させるためには計画的な取り組みが欠かせません。
適切なアプローチで進めることで、組織全体の生産性向上やコスト削減など、大きな成果を得られるでしょう。
ここでは、BPRを成功に導くための重要なポイントを解説します。
ゴールを明確に設定する
BPRを成功させるには、最終的に何を達成したいのかを明確にしましょう。
目的が曖昧なまま進めると、方向性が定まらず、効果的な改善が難しくなります。
例えば、コスト削減では、人件費や材料費をどの程度削減するのかを決める。
また、業務のスピード向上を目指すなら、特定の業務の処理時間を○%短縮するなどです。
分かりやすいゴールを明確にすることで進捗が把握しやすくなります。
対象業務を適切に選ぶ
BPRでは、すべての業務を一度に見直すのではなく、影響が大きく改善効果が高い業務を優先的に選びましょう。
例えば、社内の申請手続きを見直すことで、承認プロセスを短縮し、意思決定のスピードを上げることができます。
また、在庫管理業務を最適化すれば、不要な在庫を減らし、保管コストの削減につながります。
対象業務を慎重に選定し、組織全体に最大の効果をもたらす改革を進めることが求められます。
現場の意見を取り入れる
BPRの成功には現場の意見を積極的に取り入れることが重要です。
例えば、カスタマーサポートでは、オペレーターの意見を反映して問い合わせ対応を最適化することで、顧客満足度を高められます。
また、営業部門では受発注フローの見直しや適切なツール導入により業務効率を向上できます。
このように、実務担当者の課題を把握し反映することで、実効性の高い改善が実現できます。
外部サービスの活用も検討する
BPRには専門的な知識や経験が求められるため、すべてを社内で対応しようとすると、時間やリソースの負担が大きくなります。
業務プロセスの最適化やデジタルツールの導入に関しては、コンサルティング会社や外部サービスを活用するのも有効な手段です。
RPAやSaaSなどのツールを活用すれば、業務の効率化がスムーズに進みます。
外部の専門家と連携することで、自社に最適なBPRを効率的に進められるでしょう。
BPR導入の進め方|5つのステップ

BPRを効果的に導入するには、段階的に進めることが重要です。
業務の見直しは広範囲に及ぶため、計画を立てずに進めると混乱を招く可能性があります。
まず目的を明確にし、現状を分析したうえで、最適な業務プロセスを設計し、実施しましょう。
その後、効果を測定・評価し、継続的に改善していくことで、BPRの成果を最大化できます。
Step1:検討
BPRの実施にあたっては、まず目的と期待される成果を明確化することが重要です。
業務のスピード向上やコスト削減など、具体的な目標によって改革の方向性が決まります。
また、従業員や経営層へのヒアリングで現場の課題を把握し、優先順位をつけて対象業務を選定します。
その上で、具体的な目標とスケジュールを設定することで、実施段階での混乱を防ぐことができます。
Step2:分析
業務の課題を特定し、最適な改善策を検討します。
その際に、ABC(活動基準原価計算)とBSC(バランス・スコアカード)を活用すると、コストと業務のバランスを分析しやすくなります。
ABCは、各業務の間接費を詳細に算出し、コストを最適化する手法です。
BSCは、財務・顧客・業務プロセス・学習と成長の4つの視点で業務を評価します。
ABCでコストを可視化し、BSCで業務の影響を分析することで、最適なBPRを実現できます。
Step3:設計
分析結果をもとに、新しい業務プロセスを設計します。
無駄を削減し、業務フローを効率化するための具体的な施策を決定します。
例えば、営業部門と経理部門で同じ顧客データを管理している場合、一元化することでデータの重複を防ぎ、作業の手間を削減できます。
また、承認プロセスを短縮するために、電子決裁システムを導入することも有効です。
業務ごとに最適な方法を選び、必要に応じて標準化やアウトソーシングを取り入れます。
新しい業務プロセスの設計後は、関係者全員で共有し、実施段階での混乱を防ぐ準備を整えます。
Step4:実施
設計した業務プロセスを実際に導入します。
BPRは組織全体に影響を与えるため、スムーズに進めるには段階的な導入が効果的です。
いきなり全体を変革するのではなく、一部の部署で試験運用を行い、問題点を洗い出すことで、より実践的なプロセスに調整できます。
また、従業員が新しい業務フローに適応しやすいように、研修やマニュアルの整備を行うことも重要です。
特に、ITシステムを導入する場合は、トラブルが発生した際の対応策を事前に用意しておくと、スムーズな移行が可能になります。
Step5:測定・評価
BPRを実施した後は、業務改善の効果を測定し、評価を行います。
例えば、処理時間の短縮を目標としていた場合、導入前後のデータを比較し、どの程度の改善が見られたかを分析します。
また、業務コストの削減や従業員の負担軽減などの定性面も評価し、必要に応じて追加の改善策を検討します。
BPRは一度導入したら終わりではなく、継続的に見直しを行うことで、より最適な業務プロセスを維持できます。
定期的なモニタリングを行い、業務フローの効率化を進めることが、BPRの成功につながります。
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まとめ|BPRを実践してDX推進を加速させよう
BPRは業務の効率化にとどまらず、企業の根本的な変革とDX推進を目指す取り組みです。
業務プロセスの可視化から課題特定、改善策の設計・実行、継続的改善まで体系的に進めることで、効果的な改革が実現できます。
また、これは従業員の働きやすさを向上させ、企業の競争力強化にもつながります。
適切なフレームワークや外部サービスを活用し、計画的に進めることで、持続的な成長とDX推進を両立できます。