業務のムダを削減し、効率的に改善を進めたいと考えている企業は多いでしょう。しかし、「どこから手をつけるべきか分からない」「改善が思うように進まない」と悩むことも少なくありません。そんなときに役立つのが業務改善のフレームワークです。
フレームワークとは、問題解決をスムーズに進めるために役立つ、思考の枠組みのことです。フレームワークには、解決策を論理的に導く力があります。
本記事では、業務改善に役立つ7つのフレームワークを紹介し、それぞれの特徴や活用方法を解説します。継続的な効率化を実現するために、適切な手法を取り入れ、効率的な業務運営を目指しましょう。
業務改善とは

業務改善とは、企業の業務プロセスを最適化し、生産性を向上させる取り組みです。業務には「ムリ・ムダ・ムラ」が潜んでおり、非効率やコスト増加の原因になります。
不要な業務を削減し、システム化や標準化を進めることで、誰でもスムーズに業務を進められる仕組みを作れます。
業務改善にフレームワークを活用すると良い理由

業務改善を成功させるには、課題を的確に把握し、意味のある改善を進めることが重要です。そこで役立つのがフレームワークです。ここでは、業務改善にフレームワークを活用すると良い理由を見ていきましょう。
課題を見つけやすい
業務全体の課題を明確にすることが、改善への第一歩です。課題の「見える化」により、チーム内での認識のズレも減ります。共通の視点を持つことで、議論がスムーズになり、より効果的な改善策を導き出せるでしょう。
結果として、改善へのモチベーション向上や業務効率の向上につながります。
効率よく課題改善を目指せる
無駄を省き、最短ルートで改善策を導き出せるのもフレームワークの強みです。課題を整理し、解決までのプロセスを体系的に進めることで、感覚や経験に頼らず、根拠のある施策を実行できます。
また、業務の標準化やマニュアル整備を進めることで、業務の偏りをなくし、負担の分散にもつながります。その結果、個人に依存しないスムーズな業務運営が可能になり、生産性向上にも寄与します。
業務改善に役立つフレームワーク7選

フレームワークは、ビジネス、IT、経営戦略など、さまざまな分野で活用されています。ここでは、業務改善に役立つ代表的な7つのフレームワークを紹介します。
①ECRS
ECRSは、業務のムダを削減し、効率化を図るためのフレームワークです。業務を「排除・結合・再配置・簡素化」の4つの視点で見直し、不要な業務や複雑なプロセスを削減します。
- Eliminate(排除):不要な業務や作業をなくせるか検討
- Combine(結合):類似業務を統合して効率化
- Rearrange(再配置):作業順や担当を見直し最適化
- Simplify(簡素化):業務プロセスを簡略化
このフレームワークは、業務のシンプル化を促し、標準化や自動化にもつなげられるため、製造業や事務作業の効率化に特に適しています。
②ロジックツリー
ロジックツリーは、問題を細分化し、原因の特定や解決策を導き出すためのフレームワークです。例えば、課題の解決策を探る場合の理由を、ツリー状で考慮します。ポイントとして、上から、抽象的なものから具体的なものへとつながっていくとうまくいきやすいです。
- Whatツリー(要素分解):業務の構成要素を整理し、改善点を明確にする
- Whyツリー(原因追求):「なぜ」を繰り返し、問題の根本原因を特定
- Howツリー(解決策検討):問題を解決する方法を網羅的に考える
MECE(漏れなく、ダブりなく)の視点を意識することで、分析の精度を高められます。
③QCD
QCDは、「品質・コスト・納期」の3つの視点から業務改善を進めるフレームワークです。特に製造業や物流業などで活用され、業務のバランスを最適化するために重要な考え方です。
- Quality(品質):業務の精度や製品の品質を向上させる
- Cost(コスト):コストを最適化し、利益を最大化する
- Delivery(納期):業務のスピードを向上し、納期を短縮する
QCDのバランスを取ることが、持続的な業務改善の鍵となります。例えば、品質を向上させつつコストを削減するために、ECRSを組み合わせて業務の効率化を図るといった活用方法もあります。
④PDCAサイクル
PDCAサイクルは、継続的な業務改善を実現するための基本フレームワークです。「計画→実行→評価→改善」のサイクルを繰り返しながら、業務の質を向上させます。
- Plan(計画):目標を設定し、改善策を立案
- Do(実行):計画に基づいて業務を実施
- Check(評価):実行結果を分析し、問題点を特定
- Action(改善):評価結果をもとに改善策を実施し、次の計画につなげる
PDCAは、業務の属人化(特定の人に依存した体制)を防ぐことができます。
⑤バリューチェーン分析
バリューチェーン分析は、業務の付加価値を可視化し、利益向上につなげるフレームワークです。業務を「主活動」と「支援活動」に分類し、それぞれの価値を分析することで、効率化やコスト削減のポイントを見つけられます。
- 主活動:製造、流通、販売、アフターサービスなど直接的な価値を生む業務
- 支援活動:調達、人事、技術開発、管理業務など間接的に価値を支える業務
バリューチェーン分析を活用することで、業務のどこに強み・弱みがあるのかを明確にし、改善の優先順位をつけられます。
⑥KPT
KPTは、業務の振り返りと改善策の検討に役立つフレームワークです。業務の進捗を整理し、次のアクションにつなげるのに適しています。
- Keep(継続すること):うまくいっている施策や手法を明確化
- Problem(問題点):課題や改善すべき点を洗い出し
- Try(挑戦すること):次に試すべき新しい施策を決める
KPTは、アジャイル開発(短期間のサイクルを繰り返しながら開発を進める手法)やプロジェクト管理に適しています。
⑦SWOT分析
SWOT分析は、業務の現状を「内部要因」と「外部要因」に分けて整理し、戦略を立てるためのフレームワークです。この分析をもとに、自社の強み・弱みを分析し、外部環境を踏まえた改善策を検討できます。
- Strengths(強み):競争優位性のあるポイントを特定
- Weaknesses(弱み):改善が必要な課題を明確化
- Opportunities(機会):市場の変化やチャンスを活かす
- Threats(脅威):競合や外部リスクを把握し対策を練る
特に、新規プロジェクトや事業を展開する際の方向性やリスクを分析する手法として広く活用されています。
業務改善の進め方

業務改善を効果的に進めるためには、適切な手順を踏むことが重要です。計画なしに進めると、期待した効果が得られないだけでなく、かえって業務の負担が増えるかもしれません。ここでは、業務改善の基本的な進め方を5つのステップに分けて解説します。
1.目標を設定する
何を改善したいのか、どのような成果を目指すのかを具体的に定めることで、取り組むべき課題が明確になります。目標を設定する際は、「SMARTの法則(具体的・測定可能・達成可能・関連性がある・期限が明確)」を意識すると、実行しやすい計画を立てられます。
例えば、「業務の処理時間を3カ月以内に20%短縮する」など、定量的な指標を含めると進捗を把握しやすくなります。
2.業務を削減する
業務を整理し、本当に必要な作業だけを残すことが大切です。削減の際には、以下のポイントを検討しましょう。
- 不要な業務の排除:ムダなルーチン業務や不要な書類作成をなくす
- プロセスの簡素化:作業工程を見直し、手間を減らす
- 業務の自動化:RPAやデジタルツールを活用し、作業を効率化する
ECRS(排除・結合・再配置・簡素化)のフレームワークを活用すると、削減すべき業務を体系的に整理できるでしょう。
3.課題を整理する
業務フローを図式化し、作業の流れを把握すると、ムダな工程を発見しやすくなります。課題整理の際は、以下の手順を意識しましょう。
- 業務プロセスの可視化(BPMNなどを活用)
- 課題の影響範囲の分析
- 原因の深掘り(ロジックツリーを活用)
- 優先順位の設定(影響度×緊急度で判断)
優先順位は、解決に必要な時間やコスト、得られる効果などの観点を考慮して判断すると良いでしょう。
4.改善計画を提案する
課題が整理できたら、具体的な改善策を計画します。改善計画は、場当たり的ではなく、実行可能なステップを設けるとうまくいきやすいです。改善計画には以下の内容を含めると効果的です。
- 実施スケジュール
- 担当者の明確化
- 評価指標の設定(KPIなど)
QCD(品質・コスト・納期)の視点を取り入れると、実現性の高い計画を立案できます。
5.計画を実行し改善を繰り返す
業務改善は一度実施すれば終わりではなく、継続的な見直しが不可欠です。PDCAサイクルを活用し、計画的に改善を繰り返すことで、業務の効率化を長期的に維持できます。実行フェーズでは、以下の点を意識しましょう。
- 現場への周知とトレーニング
- トライアルの実施
- フィードバックの収集
- データを基にした効果検証
特に、KPT(継続・問題・挑戦)を活用すると、業務改善の振り返りと次のアクションをスムーズに進められます。
業務改善を成功させるポイント

業務改善を効果的に進めるためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。ここでは、成功につながる4つのポイントを解説します。
現場の声を取り入れる
業務改善を推進するうえで、現場の意見を反映させることは欠かせません。現場の課題を無視した改善策では、かえって業務の効率が悪化したり、従業員の負担が増えたりする可能性があります。
改善の意図を理解し、積極的に協力してもらうためには、ヒアリングや意見交換の場を設け、現場の声を適切に拾い上げることが重要です。また、改善計画に現場のアイデアを取り入れることで、より実践的で効果の高い施策を実現できます。
業務をデジタル化する
業務のデジタル化は、効率化や作業負担の軽減につながる有効な手段です。
特に、ルーチンワークが多い業務では、RPAを活用して自動化することで、大幅な時間短縮が可能になります。RPAとは、ロボティック・プロセス・オートメーションの略で、定型業務を自動化するAIやツールのことです。
また、クラウドストレージやワークフロー管理ツールを導入すれば、情報共有のスムーズ化や業務の標準化が進み、属人化の解消にもつながります。
ただし、業務のデジタル化は、現場の負担を増やさない形で導入することが大切です。デジタル化を目的にするのではなく、自社の課題や業務フローに適したツールを選定しましょう。
段階的に取り組む
業務改善を一度に進めようとすると、現場に大きな負担がかかり、混乱を招くことがあります。そのため、優先順位を決め、効果の高い部分から少しずつ進めていくことが大切です。
例えば、まずは不要な業務の削減や簡素化から始めていきましょう。次にデジタルツールの導入や業務フローの見直しへと段階的に移行すると、スムーズな定着が期待できます。小さな成功体験を積み重ねることで、現場の抵抗感を減らし、継続的な改善につなげられるでしょう。
専門家に相談する
業務改善を全て社内で対応しようとすると、時間やリソースの制約により、十分な成果が得られない場合があります。中でも、業務プロセスの最適化やデジタルツールの導入には専門知識が求められます。
そのため、外部の専門家を活用するのも有効な選択肢です。業務改善のコンサルティングを受けることで、最適な改善策を短期間で導入できます。その結果、自社にとって最も効果的な手法を選択する助けにもなるでしょう。
業務改善のご相談は『CLOUD BUDDY』へ
業務改善を進める上で、適切なフレームワークの活用は欠かせません。
『CLOUD BUDDY』では、企業ごとの課題に合わせた最適な業務改善プランを提供しています。専門コンサルタントが、業務の可視化から改善策の立案・実行までをサポート。さらに、クラウド技術やデジタルツールを活用し、業務の自動化や効率化を推進することで、持続可能な業務改善を実現します。
業務のムダを削減し、生産性を向上させたいなら『CLOUD BUDDY』にご相談ください。最適なフレームワークと実践的な改善策で、貴社の業務改善を強力にサポートします。
フレームワークを活用して効率よく業務改善に取り組もう
業務改善は、企業の生産性向上と持続的な成長に不可欠です。成功の鍵は、適切なフレームワークを活用し、計画的に改善を進めることです。業務の非効率をなくし、企業の競争力を向上させるためにも、フレームワークを活用しながら計画的に業務改善を進めましょう。