企業が成長する過程で、経理や総務といったバックオフィス業務の負担が増していくケースは少なくありません。業務量が膨らむ中で、外部の専門業者に委託する代行サービスを活用するか、自社で人材を採用して内製化を進めるか、判断に迷う経営者や管理職の方も多いでしょう。
どちらの選択肢にもメリットとデメリットがあり、自社の状況や将来的な戦略によって最適な答えは変わってきます。
本記事では、バックオフィス代行と内製化の違いを明確にしながら、それぞれの特徴やコスト構造、実際の企業事例を紹介していきます。読み進めることで、自社に適した体制を判断するための具体的な視点が得られるでしょう。
目次
Toggleバックオフィス代行と内製化の基本的な違い
バックオフィス業務を誰がどのような形で担うかは、企業の運営効率や経営戦略に直結する重要なテーマになります。代行サービスを利用すれば外部の専門家に業務を任せられますが、内製化すれば自社内で完結させることが可能になります。
どちらを選ぶべきかは、業務の性質や企業規模、将来的な成長計画によって異なるため、まずは両者の定義と運用形態を正確に理解しておくことが大切です。
ここでは、代行と内製化それぞれの基本的な考え方を整理しながら、コスト構造やノンコア業務という観点も含めて解説していきます。自社にとってどちらが適しているかを判断するための土台を築いていきましょう。
代行の定義とその運用形態
バックオフィス代行とは、経理や給与計算、総務といった間接業務を外部の専門業者に委託する仕組みを指します。代行業者は豊富な実績とノウハウを持っているため、業務の品質を一定以上に保ちながら効率的に処理を進められる点が特徴です。
運用形態としては、業務の一部だけを切り出して依頼する部分委託と、特定の部門全体を任せる包括委託の2つに分けられます。部分委託では例えば給与計算だけを外注し、他の業務は社内で対応するといった柔軟な使い方ができます。
一方、包括委託では経理部門全体を丸ごと代行業者に任せることで、社内リソースをコア業務に集中させられるでしょう。契約形態も月額固定型や従量課金型など複数あり、自社の業務量や予算に合わせて選択できます。
内製化の定義と運用形態
内製化とは、バックオフィス業務を自社の社員が担当する体制を構築し、外部に依存せずに社内で完結させる方法になります。正社員やパート、契約社員といった雇用形態で人材を採用し、必要なシステムやツールを導入しながら業務を回していくスタイルです。
運用形態としては、専任の担当者を配置する方法と、他の業務と兼任させる方法の2パターンが一般的でしょう。専任担当者を置けば業務の専門性が高まり、ミスの削減やスピードアップが期待できます。兼任の場合は人件費を抑えられる反面、担当者の負担が増えるリスクがあるため注意が必要です。
また、内製化では業務フローやマニュアルの整備、社員教育なども自社で行う必要があり、立ち上げ時には一定の時間とコストがかかります。
運営コスト・リソースの構造を整理
代行と内製化ではコスト構造が根本的に異なるため、どちらが自社にとって合理的かを見極める必要があります。代行サービスでは業務量に応じた委託費が発生しますが、人材採用や教育、システム導入といった初期投資は不要になります。月額料金や処理件数ごとの従量課金が主なコストとなり、変動費として扱いやすい点がメリットです。
一方、内製化では人件費が固定費として毎月発生し、社会保険料や福利厚生費なども含めると総額は大きくなりがちでしょう。さらに、業務に必要なソフトウェアのライセンス料やサーバー費用、オフィススペースの確保なども考慮しなければなりません。
業務量が安定している企業では内製化の方がコストを抑えられる場合もありますが、繁閑の差が激しい場合は代行の方が柔軟に対応できるケースが多いです。
自社にとって「ノンコア業務か否か」の視点
バックオフィス業務が自社の競争力にどれだけ直結するかという視点も、代行と内製化を選ぶ際の重要な判断材料になります。ノンコア業務とは、企業の売上や差別化に直接貢献しない間接的な業務を指し、多くの場合、経理や総務がこれに該当するでしょう。
こうした業務を外部に任せれば、社内の人材やリソースをコア業務に集中させられるため、事業成長のスピードを加速させられます。一方、バックオフィス業務であっても、自社独自の業務フローや高度な情報管理が求められる場合は、内製化した方が細かいコントロールが効きやすくなります。
例えば、機密性の高いデータを扱う企業や、業界特有の複雑な会計処理が必要な企業では、内製化によって品質と安全性を担保するケースも少なくありません。
バックオフィス代行を選ぶメリット・デメリット
バックオフィス代行サービスを活用する企業が増えている背景には、コスト削減や業務効率化といった明確なメリットがあります。しかし、外部に業務を委託するからこそ生じるデメリットも存在するため、両面を正しく理解しておくことが重要です。代行を選ぶ際には、短期的なコスト面だけでなく、長期的な視点で自社に与える影響を考慮する必要があるでしょう。
ここでは、代行サービスの主なメリットとして、コストや人材リスクの軽減について詳しく見ていきます。同時に、社内にノウハウが蓄積されにくいというデメリットも取り上げ、代行を選ぶ際に注意すべきポイントを整理していきましょう。
コスト・人材リスクの軽減
バックオフィス代行を利用する最大のメリットは、固定費を変動費化できる点にあります。社員を雇用すれば毎月の給与や社会保険料が固定費として発生しますが、代行サービスでは業務量に応じた委託費のみを支払う形になるため、経営の柔軟性が高まります。
特にスタートアップや中小企業では、採用活動に時間とコストをかけずに即座に業務体制を整えられる点が魅力でしょう。また、社員の退職や休職によって業務が停滞するリスクも回避できます。代行業者は複数のスタッフでチームを組んでいるため、担当者が変わっても業務の継続性が保たれやすくなります。
さらに、専門業者は最新の法改正や制度変更にも迅速に対応できる体制を整えているため、自社で情報をキャッチアップする手間が省けるでしょう。こうした点から、経営資源をコア業務に集中させたい企業にとって、代行サービスは有力な選択肢になります。
ノウハウが蓄積されない
一方で、バックオフィス代行を長期間利用し続けると、社内に業務のノウハウが蓄積されにくいというデメリットが生じます。外部に業務を任せている間、自社の社員は実務に触れる機会が減るため、経理や総務の専門知識を持つ人材が育ちにくくなるでしょう。
将来的に内製化を検討する際、ゼロから体制を構築しなければならず、かえって時間とコストがかかるケースもあります。また、代行業者との契約が終了した場合、業務の引き継ぎがスムーズに進まないリスクも考えられます。
特に自社独自の業務フローや複雑なルールがある場合、外部業者に細かい部分まで理解してもらうのは難しく、結果として業務品質が低下する可能性もあるでしょう。さらに、代行業者に依存しすぎると、自社の経営判断に必要な財務データや業務プロセスの詳細が把握しにくくなり、意思決定のスピードが鈍る恐れもあります。
内製化を選ぶメリット・デメリット
バックオフィス業務を内製化すれば、自社のコントロール下で業務を進められるため、細かい調整や迅速な対応が可能になります。社内に専門人材を配置することで、ノウハウの蓄積や情報管理の強化といったメリットが得られるでしょう。
一方で、人材採用や教育にかかるコストと時間は無視できない要素になります。特に専門性の高い業務を担える人材は採用市場でも競争が激しく、確保が難しいケースも少なくありません。ここでは、内製化によって得られる具体的なメリットと、固定費負担や人材確保の難しさといったデメリットを詳しく見ていきます。自社の状況と照らし合わせながら、内製化が本当に適した選択肢かを判断していきましょう。
ノウハウ蓄積・情報管理体制強化
内製化の最大のメリットは、業務を通じて社内にノウハウが蓄積され、組織としての対応力が向上する点にあります。経理や総務の実務を社員が担当することで、会計処理や労務管理の知識が深まり、将来的に経営判断をサポートできる人材へと成長していくでしょう。
また、自社で業務を完結させることで、機密情報の管理体制を強化できる点も見逃せません。外部に情報を共有するリスクがなくなるため、顧客データや財務情報といった重要な情報を社内だけで扱えるようになります。さらに、内製化すれば業務フローを自社の状況に合わせて柔軟にカスタマイズできるため、効率化の余地も広がります。
例えば、他部門との連携をスムーズにするための仕組みを独自に構築したり、システムを自社の運用に最適化したりすることが可能です。こうした点から、長期的な視点で組織力を高めたい企業には内製化が適しているでしょう。
固定費負担・人材確保の難しさ
内製化を進める際に避けて通れないデメリットが、固定費の増加と人材確保の困難さになります。社員を雇用すれば毎月の給与に加えて社会保険料や福利厚生費が発生し、業務量が少ない時期でもコストは変わりません。特に中小企業やスタートアップでは、固定費の増加が経営を圧迫するリスクがあるため慎重な判断が求められるでしょう。
また、経理や総務の専門知識を持つ人材は採用市場でも需要が高く、優秀な人材を確保するのは容易ではありません。採用活動に時間がかかるだけでなく、入社後の教育や業務の引き継ぎにも一定の期間が必要になります。
さらに、担当者が退職した場合、後任の採用や育成に再び時間とコストがかかるため、業務の継続性を保つのが難しくなるケースもあるでしょう。こうしたリスクを踏まえると、内製化は安定した経営基盤と採用力を持つ企業に向いた選択肢といえます。
実際に代行・内製を選択した企業の取り組み
バックオフィスの運営体制をどう構築するかは、企業ごとの状況や戦略によって最適解が異なります。理論だけでなく、実際に代行や内製化を選択した企業の事例を知ることで、自社に適した判断材料が得られるでしょう。
ここでは、給与計算業務を内製化したバース・ジャパン株式会社と、代行サービスを活用して社内人員を削減した株式会社W-ENDLESSの2つの事例を紹介していきます。
それぞれの企業がどのような課題を抱え、どのような理由で代行または内製化を選んだのか、そして実際にどのような成果を得られたのかを詳しく見ていきましょう。これらの事例を参考にすることで、自社の状況に合った選択肢が明確になるはずです。
事例①バース・ジャパン株式会社|給与計算業務を内製化
バース・ジャパン株式会社は、給与計算業務を外部の社労士事務所に委託していましたが、業務の柔軟性やコスト面での課題を感じ、内製化に踏み切りました。外部委託では給与データの修正や急な変更に対応する際、社労士事務所とのやり取りに時間がかかり、スピード感を持って対応できない点が問題になっていたといいます。
また、委託費用も年々増加傾向にあり、長期的なコスト削減を考えると内製化の方が合理的だと判断したようです。内製化にあたっては給与計算ソフトを導入し、担当者を社内で育成する体制を整えました。
その結果、給与データの修正や社員からの問い合わせに即座に対応できるようになり、業務のスピードと柔軟性が向上したといいます。さらに、給与計算に関するノウハウが社内に蓄積されたことで、労務管理全体の質も高まったとのことです。コスト面でも委託費用が不要になり、初期投資を含めても数年で元が取れる見込みが立っています。
出典参照:「弥生給与 Next」で給与計算業務を内製化。約99%のコスト削減と業務効率化を実現!|弥生株式会社
事例②株式会社W-ENDLESS|社内人員を半数まで削減
株式会社W-ENDLESSは、急速な事業拡大に伴いバックオフィス業務の負担が増大し、社員の業務過多が深刻な課題になっていました。経理や総務といった間接業務に多くの人員を割いていたため、営業やマーケティングといったコア業務にリソースを集中させられない状況が続いていたといいます。
そこで同社はバックオフィス代行サービスを導入し、経理処理や請求書発行、データ入力といった定型業務を外部に委託する決断をしました。代行サービスを活用した結果、バックオフィス部門の人員を半数まで削減することに成功し、人件費の大幅な削減を実現したとのことです。
削減した人員はコア業務に再配置され、営業活動や新規事業開発に注力できる体制が整いました。また、代行業者の専門的なノウハウによって業務の品質も向上し、ミスの削減や処理スピードの向上といった効果も得られたといいます。同社は今後も代行サービスを活用しながら、事業成長に集中する方針を続けています。
出典参照:経理・バックオフィス代行LP|BackofficeForce株式会社
バックオフィス体制づくりは『CLOUD BUDDY』へご相談ください
バックオフィス業務の運営体制を整える際、代行と内製化のどちらを選ぶべきか迷う企業は少なくありません。自社の状況を客観的に分析し、最適な選択をするには専門家のアドバイスが役立つでしょう。
『CLOUD BUDDY』では、企業ごとの課題や目標に合わせたバックオフィス体制の構築をサポートしています。経理や総務といった間接業務の効率化はもちろん、システム導入や業務フロー改善といった幅広い領域で実績を持つ専門家が在籍しているため、安心して相談できます。
代行サービスの活用や内製化に向けた準備、あるいは両者を組み合わせたハイブリッド型の体制づくりなど、柔軟な提案が可能です。まずはお気軽にお問い合わせいただき、自社に最適なバックオフィス体制を一緒に考えていきましょう。
まとめ|バックオフィス代行を選ぶために適切な判断をしよう
バックオフィス業務を代行サービスに委託するか、内製化するかは、企業の成長段階や経営戦略によって最適な答えが変わってきます。代行サービスはコストの変動費化や専門性の高い業務対応といったメリットがある一方、ノウハウが社内に蓄積されにくい点には注意が必要です。
内製化は情報管理の強化や組織力の向上につながりますが、固定費の増加や人材確保の難しさといった課題もあるでしょう。どちらを選ぶにしても、自社のコア業務とノンコア業務を明確に分け、長期的な視点で判断することが重要になります。
実際の企業事例も参考にしながら、自社に最適なバックオフィス体制を構築していきましょう。適切な判断が、企業の成長を加速させる原動力になるはずです。






