企業活動を支えるバックオフィス業務は、目立たないながらも組織運営に欠かせない重要な役割を担っています。しかし、多くの企業では人手不足や業務の煩雑さに悩まされており、本来注力すべきコア業務に時間を割けないという課題を抱えているのではないでしょうか。バックオフィス業務を効率化することで、従業員の負担軽減や生産性向上が実現できます。
この記事では、バックオフィス業務の全体像から効率化が重要な理由、具体的な業務内容、さらには効率化に役立つツールまで詳しく紹介していきますので、自社の業務改善に向けた具体的な施策を検討する際の参考にしてみてください。
目次
Toggleバックオフィス業務とは
バックオフィス業務とは、企業の経営基盤を支える間接部門が担当する業務全般を指します。営業や製造といった直接利益を生み出すフロントオフィス業務とは対照的に、社内の管理や運営を担う裏方の仕事といえるでしょう。
具体的には経理や人事、総務、法務、情報システムなどの部門が該当し、社員の給与計算や勤怠管理、契約書の作成、設備の維持管理といった多岐にわたる業務を担当しています。これらの業務は企業活動の土台となるものであり、適切に機能しなければ組織全体の運営に支障をきたしてしまうため、その重要性は高いといえます。
バックオフィス業務の効率化が重要な理由
バックオフィス業務の効率化が求められる背景には、いくつかの重要な理由があります。まず第一に、労働人口の減少により人材確保が困難になっている現状があります。限られた人員で業務を回すためには、業務プロセスの見直しや自動化が不可欠だといえるでしょう。
次に、働き方改革の推進により長時間労働の是正が求められており、業務効率化によって労働時間を削減する必要性が高まっています。デジタルトランスフォーメーションの進展により、紙ベースの業務からデジタル化への移行が加速しており、システムを活用した効率化が実現しやすい環境が整ってきました。バックオフィス業務を効率化することで、従業員は付加価値の高い業務に集中でき、結果として企業全体の競争力強化につながります。コスト削減やミスの減少といった副次的な効果も期待できるため、積極的に取り組む価値があるといえるでしょう。
バックオフィス業務に分類される仕事
バックオフィス業務は多岐にわたり、それぞれの部門が専門性を持って企業運営を支えています。
ここからは、代表的なバックオフィス業務の内容について詳しく見ていきましょう。各部門の役割を理解することで、どの業務から効率化に着手すべきか判断する材料になります。また、自社のバックオフィス体制を見直す際にも、これらの分類を参考にすることで抜け漏れなく検討を進められるでしょう。
それでは、主要な5つの業務分野について、具体的な業務内容と特徴を解説していきます。
経理・会計
経理・会計部門は、企業のお金の流れを管理する重要な役割を担っています。日々の取引を記録する仕訳業務から始まり、請求書の発行や支払処理、売掛金や買掛金の管理といった日常業務を行います。
月次では試算表の作成や経費精算、給与計算に伴う処理を実施し、四半期ごとには決算業務や税務申告の準備を進めなければなりません。年度末には本決算を行い、財務諸表を作成して株主や金融機関に報告します。これらの業務は正確性が求められるだけでなく、法令遵守も重要になってきます。
近年では会計ソフトやクラウドサービスの導入により、データ入力の自動化や複数拠点での情報共有が容易になりました。経理業務を効率化することで、月次決算の早期化や経営判断に必要な情報をタイムリーに提供できるようになり、企業の意思決定スピードの向上にも貢献できるでしょう。
人事・労務
人事・労務部門は、従業員の採用から退職までのライフサイクル全般を管理しています。採用活動では求人票の作成や応募者対応、面接の調整、内定手続きなどを担当し、優秀な人材の確保に努めます。
入社後は社員情報の管理や人事評価制度の運用、教育研修の企画実施といった人材育成業務を行います。労務管理では勤怠データの集計や給与計算、社会保険の手続き、就業規則の整備といった法令に基づく業務が中心となります。
さらに労働環境の改善や社員の健康管理、メンタルヘルスケアなども重要な役割です。近年では働き方の多様化に対応し、リモートワークやフレックスタイム制度の導入支援なども求められています。人事・労務業務を効率化することで、戦略的な人材配置や従業員エンゲージメントの向上に時間を使えるようになり、組織力の強化につながっていくでしょう。
総務・庶務
総務・庶務部門は、企業活動を円滑に進めるための幅広い業務を担当しています。オフィス管理では備品の発注や在庫管理、設備の保守点検、清掃業者との調整などを行い、快適な職場環境を維持します。
ファシリティ管理では賃貸契約の更新や移転の手配、セキュリティ対策の実施といった建物や設備に関する業務を担います。社内イベントの企画運営も総務の重要な役割であり、入社式や社員旅行、懇親会などの準備から当日の運営までを担当します。
その他にも郵便物の管理や来客対応、電話対応、文書管理、社内規程の整備など、多岐にわたる業務をこなさなければなりません。これらの業務は定型的なものも多いため、マニュアル化やシステム導入による効率化の効果が出やすい分野といえます。総務業務を効率化することで、従業員がコア業務に集中できる環境を整え、組織全体の生産性向上に寄与できるでしょう。
法務・コンプライアンス
法務・コンプライアンス部門は、企業の法的リスクを管理し、健全な経営を支える役割を担っています。契約書の作成やレビューでは、取引先との契約内容を精査し、自社に不利な条項がないか確認します。
法律相談への対応では、各部署から寄せられる法的な疑問に答え、適切なアドバイスを提供しなければなりません。訴訟対応では外部の弁護士と連携しながら、訴訟リスクの最小化や紛争解決に向けた戦略を立てます。
コンプライアンス推進では社内規程の整備や従業員向け研修の実施、内部通報制度の運営などを通じて、法令遵守の文化を醸成していきます。近年では個人情報保護やインサイダー取引防止、贈収賄防止といった分野での対応も重要性を増しています。法務業務を効率化することで、契約審査のスピードアップや法的リスクの早期発見が実現し、企業価値の保全につながっていくでしょう。
情報システム
情報システム部門は、企業のIT基盤を構築し、安全かつ効率的な情報環境を提供する役割を担っています。社内システムの導入や保守では、業務システムの選定から導入プロジェクトの管理、運用後のメンテナンスまでを担当します。
ネットワーク管理では社内LANやインターネット接続の安定稼働を監視し、障害発生時には迅速に対応しなければなりません。セキュリティ対策では、ウイルス対策ソフトの導入やファイアウォールの設定、アクセス権限の管理などを通じて、情報漏えいやサイバー攻撃から企業を守ります。ヘルプデスク業務では、社員からのパソコンやソフトウェアに関する問い合わせに対応し、トラブルシューティングを行います。
近年ではクラウドサービスの活用やテレワーク環境の整備など、新しい働き方に対応したシステム構築も求められています。情報システム業務を効率化することで、セキュリティレベルの向上や社員のIT活用促進が実現し、デジタル変革を推進できるでしょう。
バックオフィス業務の効率化に役立つツール例
バックオフィス業務の効率化を実現するためには、適切なツールの導入が効果的な手段となります。近年では様々な業務に対応したクラウドサービスやシステムが提供されており、自社の課題に合わせて選択できる環境が整っています。
ここからは、実際にバックオフィス業務の効率化に貢献している代表的なツールを5つ紹介していきます。各ツールの特徴や機能を理解することで、自社に適したシステム選定の参考になるでしょう。導入を検討する際は、費用対効果や既存システムとの連携性も考慮しながら判断することが重要になります。
①カオナビ|社員のスキルセットを加味した人事異動案を自動作成
カオナビは、人材配置の最適化を支援するタレントマネジメントシステムとして多くの企業に導入されています。このツールの最も特徴的な機能は、社員一人ひとりのスキルや経験、希望などを可視化し、データに基づいた人事異動案を自動で作成できる点です。
従来の人事異動では、担当者の経験や勘に頼る部分が多く、適材適所の配置が難しいケースもありました。カオナビを活用することで、社員の保有資格や過去のプロジェクト経験、語学力といった詳細な情報を一元管理し、組織のニーズに合った最適な人材配置を実現できます。
評価制度との連動も可能であり、目標管理や評価プロセスもシステム上で完結できるため、人事評価業務の工数削減にもつながります。さらに後継者育成計画や離職リスクの分析といった戦略的人事施策にも活用でき、人事部門の業務品質向上に貢献してくれるでしょう。
出典参照:カオナビ|株式会社カオナビ
②タレントパレット|人材採用や離職防止などの業務を一元管理
タレントパレットは、人事業務全般を統合的に管理できるプラットフォームとして注目を集めています。採用管理機能では、求人媒体との連携や応募者情報の管理、選考プロセスの進捗管理などを一元化でき、採用活動の効率化を実現します。
入社後は従業員データベースとして機能し、基本情報から評価履歴、スキル情報まで包括的に管理できるため、人事担当者の情報検索時間を大幅に削減できます。離職防止機能では、従業員エンゲージメントのサーベイ結果や勤怠データを分析し、離職リスクの高い社員を早期に発見できます。タレントマネジメント機能も充実しており、後継者育成計画の策定やハイパフォーマー分析なども可能です。
人材育成では、スキルマップの作成や研修履歴の管理を通じて、計画的な育成プログラムを実施できるでしょう。これらの機能を活用することで、人事部門は戦略的な人材マネジメントに注力できるようになります。
出典参照:24年度シェアNo.1 タレントマネジメントシステム|株式会社プラスアルファ・コンサルティング
③マネーフォワードクラウド経費|遠隔でもできる経費精算で効率化
マネーフォワードクラウド経費は、経費精算業務のデジタル化を実現するクラウドサービスとして幅広い企業に導入されています。スマートフォンアプリを使ってレシートを撮影するだけで、自動的にデータ化されて経費申請ができるため、従業員の手入力作業を削減できます。交通系ICカードとの連携機能も備えており、交通費の申請も履歴から選択するだけで完了するため、申請者の負担を軽減できるでしょう。
クレジットカードや銀行口座とも連携でき、利用明細を自動取得して経費申請に反映させることも可能です。承認者は場所を問わずスマートフォンやパソコンから承認作業ができるため、リモートワーク環境でもスムーズに経費精算を進められます。
会計ソフトとの連携により、承認された経費データを自動で仕訳に反映できるため、経理担当者の入力作業も削減されます。経費精算業務全体の工数を減らし、月次決算の早期化にも貢献してくれるツールといえるでしょう。
出典参照:マネーフォワード クラウド経費 – 無料で試せる経費精算システム|株式会社マネーフォワード
④ジョブカン勤怠管理|初期費用無料の勤怠管理で効率化のコストを改善
ジョブカン勤怠管理は、初期費用無料で導入できるクラウド型勤怠管理システムとして、中小企業を中心に高い人気を誇っています。
パソコンやスマートフォン、ICカード、生体認証など多様な打刻方法に対応しており、オフィス勤務だけでなくリモートワークや外勤にも柔軟に対応できます。シフト管理機能も充実しており、複雑なシフトパターンにも対応可能なため、小売業や飲食業といったシフト制の職場でも活用できるでしょう。
残業時間の自動集計や有給休暇の管理、労働時間の上限規制アラートなど、労務管理に必要な機能を網羅しています。給与計算ソフトとの連携も可能であり、勤怠データを自動で給与計算に反映できるため、人事労務担当者の業務効率化に貢献します。操作画面もシンプルで使いやすく設計されているため、ITに不慣れな従業員でもスムーズに利用できます。月額料金も利用人数に応じた従量課金制であり、コストを抑えながら勤怠管理業務を効率化できるでしょう。
出典参照:ジョブカン勤怠管理|株式会社DONUTS
⑤クラウドサイン|電子契約サービスで契約業務の省人化に貢献
クラウドサインは、日本の法律に準拠した電子契約サービスとして、多くの企業で導入が進んでいます。
従来の紙の契約書では、印刷や製本、押印、郵送といった多くの工程が必要でしたが、クラウドサインを利用することでこれらの作業をすべてオンライン上で完結できます。契約書のアップロードから相手方への送信、電子署名の付与、契約書の保管まで一連の流れをシステム上で管理できるため、契約締結までの時間を短縮できるでしょう。
印紙税が不要になることや郵送コストの削減など、コスト面でのメリットも見逃せません。契約書の検索機能も充実しており、過去の契約書を瞬時に見つけられるため、契約内容の確認作業も効率化されます。
セキュリティ面でも高い水準を保っており、暗号化通信や二段階認証、アクセスログの記録などにより、契約情報を安全に管理できます。テレワークの普及により対面での契約締結が難しくなった現在、電子契約サービスの重要性はますます高まっているといえるでしょう。
出典参照:クラウドサイン|弁護士ドットコム株式会社
バックオフィス業務の効率化は『CLOUD BUDDY』へご相談ください
バックオフィス業務の効率化を検討しているものの、どのツールを選べばよいか分からない、導入後の運用に不安があるといった悩みをお持ちではないでしょうか。
『CLOUD BUDDY』では、企業のバックオフィス業務効率化を総合的に支援しています。業務分析から課題の洗い出し、最適なツールの選定、導入支援、運用サポートまで一貫して対応できるため、安心してお任せいただけます。豊富な導入実績に基づいた実践的なアドバイスを提供し、確実に効果を出せる効率化施策をご提案いたします。まずはお気軽にご相談ください。
まとめ|バックオフィス業務の全体像を把握して、効率化しよう
バックオフィス業務は経理や人事、総務、法務、情報システムなど多岐にわたり、企業運営の基盤を支える重要な役割を担っています。労働人口の減少や働き方改革の推進により、これらの業務を効率化することの重要性は年々高まっています。
効率化を実現するためには、まず自社のバックオフィス業務の全体像を把握し、どの業務にどれだけの時間がかかっているか分析することが第一歩となります。その上で、紹介したようなツールを活用しながら、業務プロセスの見直しやデジタル化を進めていきましょう。
効率化により生まれた時間を戦略的な業務に振り向けることで、企業全体の競争力強化につながっていきます。






