採用後すぐに社員が離職してしまう「早期離職」は、企業にとって採用コストや教育コストの増加だけでなく、組織の士気低下やチーム運営への影響も引き起こします。特に新卒や中途採用で入社後6か月以内の離職が目立つ企業では、原因を把握し、適切な対策を講じることが重要です。
本記事では、早期離職の定義や現状データを整理したうえで、離職の原因を分析し、採用段階で取り組める防止策や実践事例を紹介します。これを読むことで、社員が安心して働ける環境づくりや離職リスクの低減に向けた具体的な施策を理解でき、採用後の定着率向上に役立てられます。
目次
Toggle早期離職とは何か
早期離職を理解することは、適切な防止策を設計するうえで欠かせません。単に「入社してすぐ辞める社員」という認識だけでは不十分で、期間や離職率の基準を明確にすることで、自社の課題の大きさを把握できます。
早期離職の定義と期間
一般的に早期離職とは、入社から3〜12か月以内に退職してしまうケースを指します。特に6か月以内での離職は、新入社員が業務を理解する前に辞めてしまう状況であり、職場適応や教育支援の不足が背景にある可能性が高いと考えられます。単なるモチベーション低下というよりも、仕事内容や待遇への期待とのギャップ、社風や価値観の違い、人間関係の不一致、さらには研修や指導体制の不十分さなど、複数の要因が絡み合う点が特徴です。
定義を明確にして期間を意識することで、企業は「どの時点で離職が起こりやすいのか」を把握できるようになります。その結果、入社直後の研修を充実させるべきなのか、3か月後の定着面談を強化するべきなのかといった具体的な対策を検討しやすくなります。つまり、早期離職を単なる数値として捉えるのではなく、発生時期ごとにリスク要因を整理することで、実効性のある改善策へとつなげやすくなるのです。
出典参照:新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します|厚生労働省
日本における早期離職の現状データ
厚生労働省の調査によれば、新規学卒者のおよそ30%が入社3年以内に離職しています。その中でも入社1年以内の離職が一定数存在しており、特に半年以内で辞めてしまうケースも少なくありません。これは新卒者だけでなく中途採用者にも見られる傾向であり、採用直後に業務や職場に馴染めない状況が早期離職につながっていると分析されています。
この現状は、単に採用コストの損失にとどまらず、教育や研修に投じた時間や人員の負担が無駄になるリスクを含んでいます。さらに、離職者が出ることで残った社員の業務量が増加し、チーム全体の士気や心理的安全性が損なわれる懸念もあります。そのため、早期離職を放置すると組織全体のパフォーマンスに影響が及びやすくなります。
したがって、定量的なデータを基に離職傾向を把握し、業務内容の説明強化やオンボーディングの改善、社内コミュニケーションの支援など、原因に応じた具体的な施策を検討することが重要です。データを出発点として改善を積み重ねる姿勢が、定着率の向上につながります。
早期離職が発生する主な原因
早期離職を防ぐには、まず原因を正確に把握する必要があります。離職の背景は多面的で、仕事内容や待遇、社風や価値観、職場の人間関係などが絡むため、個別のケースを分析することが重要です。
仕事内容や待遇のギャップ
入社前の情報や面接での説明と実際の仕事内容や待遇に差があると、社員は期待外れを感じやすくなります。業務量や業務内容の難易度が想定より高い場合、あるいは給与や福利厚生の条件に不満がある場合、モチベーションの低下から早期離職につながりやすくなります。
このギャップは、求人票や面接での情報提供の精度を高めることで軽減できるでしょう。また、入社前研修やオリエンテーションで業務内容や社内ルールを正確に伝えることも有効です。透明性のある情報提供は、社員が入社後に安心して業務に取り組むための重要な要素となります。
社風や価値観とのミスマッチ
企業文化や価値観が社員と合わない場合も、早期離職の要因になり得ます。例えば、成果主義が強い環境で協調性を重視する人物が働くとストレスが生じやすく、反対に自由度の高い環境でルールや管理を重視する人材は働きにくさを感じる場合があります。
社風や価値観の確認は、採用面接や企業説明会で社員の実体験を共有することで、入社前に候補者が自分に合う職場かどうかを判断しやすくなるでしょう。このプロセスは、採用後の定着率向上に直結します。
職場の人間関係や心理的安全性の欠如
職場の人間関係が悪化していたり、上司や同僚に意見や相談がしづらい環境では、社員は心理的に不安定になり離職を考えやすくなります。特に新入社員は、経験不足から孤立感や不安を感じやすく、早期離職のリスクが高まります。
心理的安全性を高めるためには、メンター制度や定期的な1on1ミーティング、チームビルディングの取り組みが有効です。社員が安心して相談できる環境を整えることで、早期離職の抑制につながります。
採用段階でできる早期離職防止策
早期離職を防ぐためには、入社後だけでなく採用段階での工夫も重要です。求める人物像の明確化や現場社員を交えた面接は、ミスマッチを防ぎ定着率向上につながります。
求める人物像の明確化とカルチャーフィット確認
採用の初期段階で求める人物像を具体化することで、入社後のミスマッチを減らせます。スキルや経験だけでなく、価値観や働き方の好みも考慮し、カルチャーフィットを確認することが重要です。
選考プロセスでカルチャーフィットを判断するには、ケース面接や価値観に関する質問、グループディスカッションを活用できます。これにより、候補者が企業文化に合うかどうかを把握しやすくなり、入社後の定着につなげやすくなります。
面接に現場社員を参加させる仕組み
現場社員を面接に参加させることで、候補者は業務内容や職場の雰囲気をよりリアルに把握できます。同時に、現場社員も候補者のスキルや価値観を直接確認できるため、採用判断の精度が向上します。
また、現場社員が面接に関与することで、入社後のサポート体制が自然に構築されやすくなり、早期離職リスクを軽減できるでしょう。候補者と職場のマッチング精度を高める工夫として、現場社員参加型の面接は効果的な手法です。
入社後に必要な定着フォロー施策
入社後のフォロー施策は、社員が職場に安心して定着できる環境を整えるために欠かせません。初期段階からのサポートや明確なキャリア設計、コミュニケーション強化を通じて、早期離職のリスクを低減できます。
メンター制度やバディ制度の導入
メンター制度やバディ制度を導入することで、新入社員は業務上の疑問や不安を気軽に相談できる環境を持てます。入社直後の業務適応期間は特に心理的負担が大きく、指導者やサポート担当がそばにいることで、孤立感やストレスを軽減できるかもしれません。
さらに、定期的な面談や進捗確認を組み合わせると、社員の成長や悩みの変化を把握しやすくなります。これにより、早期に課題を認識し適切に対応できるため、離職リスクを抑えつつ職場への安心感を高められます。
キャリアパスの提示と教育制度の活用
入社後すぐにキャリアパスや成長機会が見える環境は、社員のモチベーション維持に直結します。具体的な昇進ルートやスキルアッププログラムを提示することで、将来の目標が明確になり、早期離職の抑制につながります。
教育制度を活用して定期的に研修やOJTを行うことで、業務理解を深めつつスキルを着実に伸ばせるでしょう。社員が自分の成長を実感できる仕組みを整えると、組織への信頼や定着意識も向上します。
社内コミュニケーションの強化と称賛文化
社内コミュニケーションの活性化は、心理的安全性の向上とチーム連携の強化に寄与します。定期的な1on1やチームミーティングを設けることで、社員が安心して意見を共有できる場を提供できます。
加えて、称賛文化を醸成することで、成果や努力が適切に評価されると実感でき、モチベーション低下を防げるでしょう。日常的なフィードバックや感謝の表現を制度化すると、社員の組織への愛着が高まり、早期離職防止に寄与します。
早期離職防止に成功した企業事例
実際の企業での取り組みを見ると、定着施策がどのように効果を発揮しているかが理解しやすくなります。ここでは、具体的な事例を紹介します。
事例①株式会社リクルート|従業員エンゲージメントを可視化
リクルートでは従業員エンゲージメントの可視化に取り組み、個々の社員がどの程度組織に関与しているかを把握しています。まず、リクルートMSは独自の調査メソッド(サーベイ)を用いて「仕事」「職場」「会社」という三つの視点からエンゲージメントを診断し、この三要素を可視化します。その結果をもとに、企業ごとに抱える課題を明らかにし、改善策を提案・実施します。
また、調査だけに留まらず、職場での行動変容を促す支援やフォローも特色です。研修や職場実践支援ツール(Learning Pit のような仕組み)を活用して、調査結果を現場で生かす動きを後押しし、研修効果の可視化と課題設定支援も提供しています。
この取り組みにより、社員の声が組織改善に反映されるだけでなく、心理的安全性の確保やキャリア支援が実践され、早期離職リスクを低減する効果が見られました。定量的なデータを用いることで、課題が明確になり、フォロー施策の精度も向上したのです。
出典参照:組織診断・従業員エンゲージメント向上支援|株式会社リクルート
事例②株式会社スープストックトーキョー|社員の働き方と社風浸透の工夫
スープストックトーキョーでは、社員の働き方や社風の理解を深める取り組みを行っています。入社後の研修や社内イベントを通じて、企業理念や価値観を社員に浸透させると同時に、コミュニケーションの活性化を図りました。
また、柔軟な勤務制度や定期的な1on1で社員の働きやすさや悩みを把握し、個別にサポートを提供しています。これにより、社員が自分の役割や成長を実感できる環境を整え、早期離職の抑制につなげています。
出典参照:多様な正社員制度の導入事例|株式会社スープストックトーキョー
採用後の早期離職防止は『CLOUD BUDDY』へご相談ください
『CLOUD BUDDY』では、採用から入社後の定着まで一貫したサポートを提供しています。早期離職防止の観点から、求める人物像の明確化、面接の精度向上、入社後のフォロー施策の設計までを支援し、離職リスクを低減する仕組みづくりをサポートします。
組織や業界の特性に合わせた具体的な施策提案やツール活用も提供できるため、社員が安心して長く働ける環境構築に役立ちます。採用後の定着施策に課題を感じている企業様は、『CLOUD BUDDY』へご相談ください。
まとめ|早期離職防止のために採用の仕組みを整えよう
早期離職を防ぐには、採用段階から入社後のフォローまでを一貫して設計することが重要です。求める人物像の明確化、現場社員を交えた面接、メンター制度やキャリアパスの提示、コミュニケーションと称賛文化の整備などを組み合わせることで、社員の安心感と組織への信頼を高められます。
採用の仕組みを見直し、社員が長く活躍できる環境づくりに取り組みましょう。






