人材の採用に成功しても、入社後の離職が続くと企業の成長に影響を与えやすくなります。採用活動だけでなく、定着率を高めるための取り組みが必要であり、エンゲージメント向上や社員の満足度維持が重要な課題となります。
しかし、具体的にどの施策を進めるべきか迷う担当者も少なくありません。
本記事では、定着率を理解する方法から、離職の原因、そして実践的な改善施策まで網羅的に解説します。これを読むことで、自社にあった施策を把握し、離職防止とエンゲージメント向上を同時に進められる視点を得られるでしょう。
定着率を理解することが改善の第一歩
採用後の定着率を向上させるには、まず現状を正確に把握することが不可欠です。定着率の測定は、課題の特定や施策の優先順位を決めるうえで基盤となります。社員が入社してから一定期間でどれくらい残っているかを理解することで、離職のリスクや改善ポイントを具体的に分析できます。
ここでは、定着率の計算方法や企業経営への影響を見ていきましょう。
定着率の定義と計算方法
定着率とは、ある期間に入社した社員のうち、どれだけがその期間の終了時点で在籍しているかを示す指標です。計算方法は単純で、特定期間に入社した社員数に対して在籍している社員数を割り、100を掛けることで算出できます。この数値を基に、短期離職や中長期離職の傾向を把握することが可能です。
また、定着率の分析は単なる数字の確認ではなく、離職のタイミングや部署ごとの差異を確認する手段として活用できます。部署間で定着率に大きな差がある場合は、職場環境や上司のマネジメントに課題があるかもしれません。このように、定着率を正しく理解することで、次の改善施策を検討する土台を作れます。
日本企業における平均的な定着率
日本企業では、入社後3年以内に退職する割合が比較的高い傾向です。一般的には、正社員の3年後定着率は約7割前後とされ、職種や業界によって差があります。特に若手社員や新卒採用の場合、初期の定着率が低下しやすく、早期離職が企業に与える影響は大きくなりかねません。
また、定着率は企業規模や業種だけでなく、職場環境や福利厚生、教育体制の充実度によっても変動します。業界平均と自社の数値を比較することで、課題の度合いを把握しやすくなるでしょう。
定着率低下が企業経営に与える影響
定着率が低下すると、採用コストや教育コストが増加するだけでなく、チームの生産性や士気にも影響が及びます。頻繁な人材入れ替えは、業務の引き継ぎ負担を増やし、プロジェクトの遅延や品質低下を招きかねません。また、離職が多い職場は、残留社員の心理的負担が増え、さらに離職を招く悪循環に陥ることもあります。
さらに、企業のブランドイメージにも影響します。定着率が低い企業は採用市場での評判に影響し、優秀な人材の応募が減少するかもしれません。そのため、経営層は定着率を単なる人事指標としてではなく、企業全体の戦略課題として捉え、改善策を講じる必要があります。
人材が定着しない主な原因
社員が長期にわたり定着しない理由は多岐にわたります。労働環境の不満や人間関係の問題、評価制度の不透明さ、採用時のミスマッチなど、さまざまな要因が絡み合っています。これらの原因を理解することで、対策の優先順位を明確にし、離職リスクを低減する施策を検討しやすくなるでしょう。
ここでは、主要な原因を詳しく見ていきましょう。
労働環境や人間関係の問題
労働環境や人間関係が原因で離職が発生するケースは少なくありません。例えば、過重労働や業務負荷の偏りは社員の疲弊を招き、早期離職につながります。また、上司との関係性やチーム内のコミュニケーション不足も心理的ストレスを増やす要因になるでしょう。
このような環境下では、社員が自らの成長や貢献を実感できず、仕事へのモチベーションが低下します。その結果、定着率が下がる傾向が見られます。企業は定期的に労働環境の評価や職場の雰囲気を確認し、必要に応じて改善策を講じることが求められるのです。
不透明な評価制度とキャリア形成の不安
社員が長く働き続けるためには、自身の成長やキャリアパスが明確であることが重要です。しかし、評価基準が不透明であったり、昇進や給与の決定プロセスが曖昧であったりすると、不満や不安が生まれやすくなります。また、キャリア形成の支援が不足している場合も、将来の展望が描きにくく、離職の要因になります。
そのため、企業は評価制度を明確化し、定期的なフィードバックや目標設定の場を設けることが重要です。さらに、研修制度やキャリア相談など、社員が安心して将来を描ける仕組みを提供することで、定着率の向上につなげやすくなります。
採用段階でのミスマッチ
採用時のミスマッチも定着率低下の大きな要因です。職務内容や企業文化が応募者の期待と合致していない場合、入社後にギャップを感じやすく、早期離職に直結します。特に情報提供が不十分であったり、面接プロセスが選考中心で応募者体験を軽視している場合、入社前の不安が高まります。
ミスマッチを防ぐには、採用段階で職務内容や企業文化を正確に伝えること、応募者との双方向コミュニケーションを強化することが重要です。これにより、入社後に期待外れ感を抱くリスクを減らし、定着率向上の基盤を作れます。
定着率を高める具体的な施策
定着率向上には、社員が安心して働き続けられる環境を整える施策が求められます。オンボーディング体制の整備や柔軟な働き方の導入、キャリア支援の充実、称賛文化の醸成など、多面的に取り組むことで効果が期待できるでしょう。
ここでは実務で活用しやすい施策を解説します。
オンボーディング体制の整備と初期フォロー
入社直後のフォローは、社員の定着に大きく影響します。オンボーディング体制を整備し、入社初日から役割や業務内容を明確に伝え、先輩社員によるメンタリングや定期的な面談を実施すると、安心感や業務理解が深まります。
さらに、初期フォローとして入社1〜3か月の状況確認や課題解決のサポートを行うことで、早期離職のリスクを抑えられるでしょう。新入社員が組織に馴染みやすくなることで、長期的な定着にもつながります。
柔軟な働き方や休暇制度の充実
多様な働き方を受け入れる制度も、定着率向上に寄与します。リモートワークや時差出勤、フレックスタイム制度を導入することで、社員のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を提供できます。また、有給休暇や特別休暇の取得を促進することで、ワークライフバランスを維持しやすくなるでしょう。
柔軟性のある制度は社員満足度を高めるだけでなく、離職の心理的ハードルを下げる効果もあります。制度の存在だけでなく、活用しやすい環境作りも併せて進めることが重要です。
キャリアパスと教育研修の仕組みづくり
社員が将来を描きやすい環境を整えることも定着率向上には欠かせません。キャリアパスを明確に示し、必要なスキルや研修を体系化することで、社員は自分の成長の軌跡を確認できます。
さらに、定期的な評価面談やキャリア相談の場を提供すると、将来の不安を解消しやすくなります。教育研修と評価制度が連動している場合、社員は努力の方向性を理解しやすく、モチベーション維持にもつながるでしょう。
社内コミュニケーションと称賛文化の醸成
定着率向上には、日常的な社内コミュニケーションや称賛文化の醸成も重要です。上司や同僚からのポジティブなフィードバックや感謝の表現は、社員の心理的安全性を高め、職場への愛着心を育てます。
具体的には、定期的な1on1面談や社内掲示板での功績共有、表彰制度の導入などが挙げられます。社員が自分の貢献が認められていると実感できる環境は、離職防止に効果的です。
採用の定着率向上に成功した企業事例
定着率向上に取り組む企業の実例を知ることで、自社の施策のヒントが得られます。働き方の柔軟化や制度整備によって、社員が安心して長く働ける環境を整えている事例を紹介します。
事例①サイボウズ株式会社｜働き方宣言制度
サイボウズ株式会社は、社員が働く時間や場所を自分で宣言できる「働き方宣言制度」を導入しています。これにより、個人のライフスタイルや業務内容に合わせた柔軟な働き方を実現しており、仕事と生活のバランスを取りやすくしています。
制度導入により、社員の満足度が向上し、離職率の低下や定着率の改善につながりました。さらに、上司やチームメンバーとのコミュニケーションを密にすることで、安心感を維持しつつ業務効率の向上も図られています。柔軟な働き方を支える仕組みは、社員の長期的な定着に有効な取り組みの一例です。
出典参照：サイボウズ株式会社（Cybozu, Inc.）多様な正社員制度の導入事例｜厚生労働省
事例②カルビー株式会社｜ダイバーシティと柔軟勤務
カルビー株式会社では、ダイバーシティ推進と柔軟な勤務制度を組み合わせることで、社員が多様な働き方を選択できる環境を整えています。具体的には、時差出勤やテレワークを導入し、育児や介護などライフステージに応じた働き方を支援しています。
この取り組みにより、社員の仕事への満足度とエンゲージメントが高まり、定着率の向上につながりました。さらに、チームごとのコミュニケーション強化やキャリアパスの明確化も併せて行うことで、社員が自分の成長を実感できる職場づくりが実現されています。柔軟性と多様性を重視した施策は、定着率向上に貢献するモデルケースです。
出典参照：働き方の多様性への対応｜カルビー株式会社
採用後の定着率向上は『CLOUD BUDDY』へご相談ください
採用後の定着率向上には、オンボーディングやキャリア支援、柔軟な働き方の整備など、多角的な施策が求められます。しかし、自社だけで施策を設計し実行するのは負担が大きく、どの施策から優先的に進めるか判断に迷うこともあるでしょう。
『CLOUD BUDDY』では、採用から定着までのプロセス全体を見据え、課題に応じた改善策やツール導入の提案を行っています。社員エンゲージメントを高め、離職リスクを抑える具体的な手法をサポートすることで、組織の安定した成長に寄与できる支援が可能です。
まとめ｜採用後の体験設計で定着率を向上させよう
採用後の定着率向上には、オンボーディング体制や柔軟な働き方、キャリア支援、コミュニケーション文化の整備が重要です。実際の企業事例から学ぶと、社員が安心して働ける環境作りが定着率に直結することが分かります。
自社に合った施策を選び、計画的に実行することで、離職リスクを抑え、長期的な組織の安定を目指せます。採用後の体験設計を見直し、社員のエンゲージメントを高める取り組みを始めることが重要です。
